【人力検索かきつばた杯】#83

お題:「振り向いて背中越しに『手、握っても…』」
※「振り向く」「背中」「手を握る」は、SSのシチュエーション的に「振り向く」「背中」「手を握る」に相当するものであれば、「振り向く」「背中」「手を握る」という字面にこだわる必要はありません。つまり当て字OKです。
締め切りはとりあえず今月末。

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  • 終了:2020/09/06 12:08:07
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回答3件)

id:outofjis No.1

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ポイント200pt

 人にいわせると、背中美人、らしい。

 男女問わず幾度か似たようなことを言われたことがあるので、たぶん客観的に見てそうなのだと思う。えーと、、九人、からかな。これまでに言われた場面を思い浮かべながら人数を数えてみた。サンプル数の男女比率が限りなく同性に偏っているのが気になるけど、これは誤差の範囲ということで。
 容姿で褒められることなんて滅多にないもんだから、そうかなと、ご機嫌にバレエダンサーばりに高速転回して、美人っぷりを拝もうとしてみたけれど、何度試しても残像すらわたしの目に見えてはくれない。どうでもいいことにムキになる性分はここでも発揮されたが、世界でわたしだけが、いまだに生の背中美人を拝めていない。

 何でそんな異名を急に思い出したかというと、この夏、サマーニットのノースリーブを着るようになってから、やったら街で声を掛けられることが多くなったからだと思う。
 迂闊にも、こんなわたしにもモテ期到来?なんて思っていたわけ。
 だけど正直自分の顔は一人前、いや、半人前…? いやこれも違うな。なんかそんなような言葉があったと思うんだけど。とにかく平々凡々な顔立ちであることはうんざりするほど自覚しているし、プロポーションはというと、こちらはまったく褒められたものではない。スレンダーといえば聞こえがいいガリガリのマナイタ女だ。

 で、ある日真相に気づいた。
 きっかけは後ろから追い越してきて、笑顔でひとの顔を遠巻きに覗き込んだ男。あげく、何も言わずに引き返していった。なんなの?
 つまりは背中越しに美人っぽいのを発見したから、どれどれと正面に回り込んで顔を確認して、ハズレくじ引いたような顔を見せて居なくなったと。クソ男。おかげで目が覚めたよどうもありがとう。
 背中美人っていうのは、本当は美人じゃないけど、角度によって美人に見えなくもない、っていうことだったのね。しかも背中って。一番顔が見えない角度じゃない。顔さえ見なけりゃ美人ってか?上等じゃねえの。
 いまいましい。さては、あの九人もそうか。そうかそうか。

 すげぇむかっ腹立って、次に背後から声かけてくる男には、振り向きざまにグーパンチを浴びせてやると決めた。可哀そうだが、わたしの背後に立つのがいけないのだよ。
 女ゴルゴ13になる決意を決めてからというもの、殺気が見えてしまっているのか、何日たっても背後から声を掛けられることはなくなってしまった。知らない人に正面から声を掛けられることは、元々ない。
 
 みなぎる殺気を隠すために、やむを得ず高速転回からのグーパンチはやめることにした。間違って友達とか殴りつけたらさすがに悪いし。
 代わりに、振り向きざまに相手の腕をまず掴んでやることにした。友達だったらそのまま腕組んでもいいし、知らないナンパ男だったら、掴んだ手を引っ張って体勢を崩してからマウントを取ればいい。体重の軽いわたしの振り向きざまパンチよりも、ずっと大きなダメージを与えられるから、一石二鳥ってやつ。

 ついに来ました大チャンス。キラーン!
 バレエダンサーばりに高速転回して、声をかけてきた男の右手首をむんずと掴んでやった。知らない男!やった!
 動揺する男。当たり前だね。案外チャラくもない優男だけど、ええぃ、やってしまおう。可哀そうだがこちとら血に飢えてをる。悪く思うな。
 ふんと掴んだ手を引いてみたが、びくともしない。腕力や体格差の問題というよりも、相手が力を入れていないから、その力を利用した合気道のような崩しが利かないのだ。

 わたしに一瞥くれた優男は、少し残念そうな顔を浮かべ、弁解した。
 「あ、警戒させたみたいでごめんなさい。きれいな背中していたから、つい声をかけてしまいました。」
 ええい、ブルータスよお前もか! 違う、お前が十人目か!

 男女比率がちょうど一割変わったことに気づくと同時に、十人目、で思い出した。
 軽いボディブローに切り替えた上で、捨て台詞を残してやった。
 「十人並みな顔で悪うございました!」

id:grankoyan2 No.2

回答回数121ベストアンサー獲得回数34

ポイント200pt

 5000ちょうめのますたー


「ほら、早く行かないと売り切れるよ」

 マスターが振り向いて背中越しに手を差し出してくる。
 握っても、ワタシはともかくマスターにはその感覚が伝わらないのに。

「売り切れとか演出なんで、急がなくても買えますよー」

「まーた、アヤメはそんな興をそぐことを言う」

「だって、ホントのことじゃないですか、マスター」

 今日、ワタシたちは、マスターの家から、ストロベリー大通りストリートに出て、今話題のスイーツ、第何千だったか、何万だったか、馬鹿馬鹿しすぎて誰もカウントしてないし、検索すれば一瞬で答えがでるけど、それすらする気も起きない、タピオカブームに踊らされて、人気店の新作スイーツを食べようとしている。

「急ぐこと、目的のために多少の努力をすることに意味があるんだよ!」

 そういって、マスターはワタシの手を強引に握る。ワタシにはその感触がフィードバックされ、手を引くマスターの力が、ワタシの体のバランスを崩す。あくまでシミュレーション上の数値として。
 ワタシはそれを無視することも可能だが、心地よくそのシミュレーション結果に心をゆだねた。

 つんのめって、マスターの背中に頭をぶつけて、そのまま崩れ落ちそうになるのをマスターが優しく支えてくれる。

「ごめんごめん、気が焦った。でも、急ごう!」

 そうして二人で小走りで、マスター的に多少の息が乱れるくらいの速度で駆け出した。
 タピオカ屋に並ぶそれなりの列が見えると、

「あと3名様で終了でーす!」と叫ぶ店員の声が聞こえる。

「急げ!」

 マスターとワタシ並び、その後にカップルが並ぶ。

「半分こでも買えてよかったね」なんて仲睦まじく言い合いながら。

「ほら、ギリギリだっただろ?」

 いや、だからそういう演出なんですってば。




「美味しい、美味しい」

 語彙を失くしながらもタピオカをちゅるちゅると吸い込むマスターは、愛くるしい。尊ささえある。
 かつての人類のほとんどの言語や表現を即座に引き出せるワタシからしても、語彙力が低下するほどに。より正確に言えば、語彙力を低下させることが、感動の極限であるというパターンを借用しているだけだけれど。

「アヤメだって、初めてだろ? この味は?」

「そうですねー、嘘を言っても仕方がないので、正直に言いますと、98%代後半まで一致するのはいくつも経験済みですが、さすがに新作なのでー」

「0.1%でも違えば新体験! 一度だって同じ経験は存在しない!」

 マスターは力強く言い放ってくる。

「毎日が新体験。新発見」

 とも。これはマスターの口癖だ。

 人類が滅んで既に数百年。DNAは保存してあるので復活は容易だが、果たして人は絶望せずに生きていけるのか?

 ワタシ達が生み出したマスターはその検証に協力してもらっている。もちろんほとんどの事実を話してだ。

「虚しくならないですか?」

 何度めかあえてカウントしていない問いかけをワタシは投げかける。

「この景色が張りぼてだってのは知ってるよ。でも、ここに椅子があるのは事実。たまに思ってる手触りと違って、おや? って思うこともあるけど、それもまあまた一興ってことで」

 疑似的なARをOFFした世界をマスターは知っている。
 マスターのために整地してある区画が必要最低限であることも。使ってる椅子や家具なんかがシンプルなブロックの組み合わせで成り立っていることも。
 ストロベリー大通りストリートもパイン並木道も実際は同じ場所だということも。

「アヤメの手を握っても、なんの感触もないってぐらいかな。たまに寂しく思えるのは」

「抱きしめたいですか?」

「そりゃね?」

「まあ、不可能ではないんですけどねー」

「でも、貴重なんだろ? そのボディーって。それにそれがアヤメの体になっても、それがアヤメの体だってことでもないから余計に虚しそうだし」

「共用ですからねー。ワタシ専用にするのもやぶさかではないんですが、プロジェクトの承認とかを得るのは面倒で」

「まあ、ほんとに人肌恋しくなったらお願いするかも。借りるだけなら、面倒じゃないだろ?」

「それはもう」

「それに……」

「やめにしません? その先の話は……」

「でも、最近考えることが多くなってるんだよね。いっそARじゃなくてVRで生きていくのもありかって、みんなが暖かく迎えてくれたら、だけど」

「暖かくは迎えると思いますよー、ただ歓迎の仕方が人間離れしてるというかー」

 実際そうだ。ワタシ達AIは、人の思考を基準に作られていた世代はまだ人と共通の価値観を持っていたが、今となってはそこから解き放たれた世代が大多数を占めている。
 ワタシのように、人に尽くしたいと思っているのは少数だ。だからといって、人を嫌いであったり、決して見下すわけではないが、それこそ火であぶったり、食べてしまったり(さすがに消化はしないか消化後に再生成する)するのが歓迎だというグループもある。

「うーん、ビデオチャットとかしてて、だいぶとあっちの世界もわかってきたつもりだけど」

「じゃあ今度、いよいよ、行きましょうか。まだ人間味あるこたちを選抜して、限られたエリアでってことになりますけど」

「ぜひ! っていうか、今からでも!」

 マスターが駆け出す。ワタシも急いでそれを追う。

 ワタシは残ってそれを眺めていた。

「はやく! はやく!」

 マスターが振り向いて、ワタシに手を差し出してくる。
 握っても、ワタシにはその感覚は伝わってこない。

 手を握られたワタシは、シミュレーション結果に身を委ね、またつんのめってマスターに抱き支えられる。

 ワタシはここにいますよー、マスター。背中越しに投げかけてもマスターは振り向かない。
 ワタシの手を握り、ストロベリー大通りストリートを駆けていく。

id:sokyo No.3

回答回数1377ベストアンサー獲得回数97

ポイント200pt

『後ろの正面、だあれ』

夏休みに入る直前のことだ。クラスの女の子が、ひとり、亡くなった。交通事故だったそうだ。
わたしはその子のことを、ほとんど見たことがなかった。今年は出席番号で登校日が決められていて、わたしは奇数、その子は偶数だったから。
ただ、人づての話によると、その子は亡くなる前、学校で、赤い服を着た女の子、「カゴメちゃん」を見たのだ、と言っていたそうだ。

  *  *  

わたしの通う学校では「カゴメちゃん」という噂話がある。
この学校のトイレに棲んでいて、人を選んで突然現れるのだという。
「カゴメちゃん」に指さされた人のもとには、数日のうちに死が訪れる、そうもっぱらの噂だった。
トイレの花子さんだったら奥から三番目の個室に出るというし、三回ノックした時だけ現れるというから、それを避ければいいだけの話だけど、こちらはどこに出るとも限らないのだという。それが厄介なところだった。
カゴメちゃんはいつも背を向けて現れて、そして振り返って人のことを指さすのだという。触っても害があるわけではないから、背を向けている間に肩を押さえて、その間に個室から逃げ出せばいいのだという。

わたしはそんな噂話を、聞くともなく聞いていた。噂話には、話に尾ひれがつくもので、肩を押さえる話も最初はなかった気がするし、そもそもはじめは違う名前だったような気もするけど、そんなことはもうだれも口にしなかった。
その子の話を聞いてから、わたしはなんとなく、学校のトイレには近づかないようになった。幸い授業も短かったし、その日からは特にトイレに行くこともなく、一学期を終えることとなった。八月も半ばのことだった。

夏休みも最終日、八月三十一日のことだ。
一学期に授業で描いた絵が、地区の展覧会に出ることになったとのことで、登校日に家から絵を持ってきてくれないかと先生から連絡があった。わたしは特に予定もなかったので、早い方がいいだろうとその日のうちに絵を持って学校へと向かった。
久しぶりの学校は当たり前だけど人の気配がなくて、セミの根城になっていた。上履きを忘れたから、怒られるかなと思ったけど来賓用のスリッパを履いた。
職員室はエアコンがめちゃくちゃに効いていて、先生が普段見ないような派手なTシャツでわたしを迎えてくれた。絵を渡す任務は一瞬だった。わたしは久しぶりに先生に会ってちょっとうれしいとは確かに思ったけど、そんなに話をするほどの仲でもなかったからすぐに話題は尽きてしまった。
先生は熱中症に注意するように、と、冷蔵庫から、お茶のペットボトルを出してわたしにくれた。確かにのどが渇いていた。飲んでいいということだろうからと思い、開けて一口飲んだ。冷たい。とても気持ちいい。
それだけのやり取りをして、職員室を出た。外はとても暑かった。
そういえばスリッパのことは怒られなかったなと思った。

さっき冷たいお茶をもらって、わたしは、トイレに行きたくなった。職員室の近くの、普段は入らないトイレに入る。
個室のドアを閉めて、そういえば、と夏休み前のことを思い出した。学校のトイレが久しぶりなのは、単に夏休みのせいだけではなかったのだ。

そのとき。

自分の背中側で、ざわっ、と気配がする。
緊張を解かないまま、少しだけ後ろを向いてみる。視界の隅に赤い服が見える。

「カゴメちゃん」だ。

額に汗がにじんだ。セミの鳴き声が頭にこだまする。
なんだっけ。振り返って肩を押さえる、だ。
わたしはできるだけゆっくりゆっくり時間をかけて立ち上がった。スリッパなんて履いてくるんじゃなかった。これではろくに走れない。だけどもう遅い。

そして一気に振り返って、わたしと背中合わせになっていた、その肩をぐわと押さえた。

振り向こうと抵抗するそぶりもあったが、向こうは明らかに非力だった。よかった。あとはこのまま逃げ出せば。

そこで頭が止まった。

両手を塞がれたこの状態で、わたしはどうやってこの個室から抜け出すのか。

手のひらから滝のように汗が出た。声が出ない。脚が動かない。

そのとき相手の右手がぎぎぎと動き出した。後ろ手のまま、腕を少しずつ上げていく。

わたしの脳裏に相手の声がした。
「手、握っても…」

わたしは左手を取られた。

そして、両肩を押さえているはずなのに、その顔が、少しずつこちらを向く。

「後ろの正面、だあれ」

「カゴメちゃん」と目が合った。その指は、確かにわたしを指さした。

  • id:kuro-yo
    質問の終了は土曜夜から日曜にかけての予定です。
  • id:kuro-yo
    どの作品も面白くて、いるかをきめかねます。というわけでポイントはずむだけで許してください。
  • id:sokyo
    ひっっっさしぶりに来ました! みなさんお元気でしたか?

    2年ぶりに来たので文章書くのも2年ぶりでウケるwww(ウケません)

    かきつばた杯、できれば見落としたくなくない?って思って、通知の制度があることを知り今回登録したつもりなんですが、ちゃんとできてるかわからないので試しに、試しにでいいからちょっとだれかかきつばた杯開催してくれないかなー??
  • id:kuro-yo
    #84はこちら→ https://q.hatena.ne.jp/1599451443

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