【人力検索かきつばた杯】#41


かきつばた杯を開催します。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%CE%CF%B8%A1%BA%F7%A4%AB%A4%AD%A4%C4%A4%D0%A4%BF%C7%D5

〆切は
1/3(木)23時~ 自動終了期限前(質問者の都合により前後します)

お題:
「深夜急行」

注意事項:
 講評/感想は希望者のみ。

====
補足事項:(ポイントに興味のない方は読み飛ばしてOK)
1)内容が一定の基準を満たさない回答は基本点もカットします。(開催者判断)
2)開催者連想元ネタとの一致は、原則として採点対象外ですのでお好みで。
3)キーワードをタイトルや本文に使う縛りはありません。
4)修正履歴は採点に影響しません。
5)コメントはコメント欄にお願いします。

回答の条件
  • 1人3回まで
  • 登録:
  • 終了:2013/01/04 00:40:53
※ 有料アンケート・ポイント付き質問機能は2023年2月28日に終了しました。

ベストアンサー

id:grankoyama No.8

回答回数560ベストアンサー獲得回数170

ポイント48pt

『深夜急行#1』

 さる大国のメインコンピュータの暴走に端を発した世界戦争。国対国、つまりは人間対人間の争いから、ロボット対人間、さらにはロボット対ロボットと戦局は混乱を極め世界は崩壊を迎えた。
 僅かに残った人間達は、ちいさなコミュニティーを築き、ロボット達の襲来に怯えながら、細々と暮らしていた。
 ここにひとつの集落がある。突然の来訪者によって、にわかに緊張感が高まっていた。

「あのじいさんの話が本当だとすると、俺たちの集落も長くは持たないということだ」
 そう取りまとめたのは、戦闘にも長け、若者達のリーダー格でもある、ケインだ。
 じいさん……ケフィルと名乗った旅人は、元々は武器職人であった。彼は、自身の技術を活かして、強力な武器を携えながら世界を旅していたらしい。
 彼が見たのは、大規模なロボット達の行進。目的地はケイン達の集落である可能性が高いという。
「そんな……せっかく畑も開拓も軌道に乗って、ここでの生活も落ち着いてきたところなのに……」
 ニーナが言った。彼女は、数年前に記憶を失った状態で、この集落に辿り着いた。それ以来、ケインに付き従うように、行動をともにしている。
 そもそもこの集落の年配の人間達は保守的だ。機械、つまりはロボット達との無益な争いを避け、平穏を望んで暮らすことを目指していた。しかし、そんな暮らしは若者達には刺激が少ない。
 ケインやニーナ、それに少し年少のジャッキーなどは、武器を手にして、集落の周辺を見回るのがもはや日課となっている。本隊とはぐれたロボットや、自律機構に支障をきたし、目的地の定まらないロボットなどを発見してはハントしている。
 しかし、旅人ケフィルの伝える話は、そんな安全に裏打ちされた彼らの冒険心をぎりぎり満たすような内容ではなかった。
 ごく稀に、ケフィルのような旅人がもたらす噂話によると、人々は様々な箇所で同じような集落を作って、細々と暮らしているようだが、ロボット達の気まぐれで攻撃を受け、滅ぼされたところも数多いという。
 今、まさに、ケイン達の集落も同じ危機にさらされている。

「俺たちの村にはそんな大勢のロボットを相手にするだけの武器も弾薬もないじゃないか!」
 ジャッキーがヒステリックに叫ぶ。
「可能性はひとつだけだ……」
 そう言いながら、ケインは地図を広げた。
 そこにはケインたちの集落、そしてその近辺にひとつの×印が付けられていた。
「ここって……?」
「大戦以前に存在していた何かの研究施設だという。ケフィルから聞いた話では、軍事工場だった可能性が高い。そして、そこには大規模な破壊兵器が眠っているはずだ。保存状態さえよければ利用可能なはずだ。もしそれがあまりにも大きく動かせないものであったとしても……」
 そう言いながら、ケインは地図の一点を指し示す。
「ケフィルの言った、ロボットの一団の進行ルートに大きな迂回が無ければ……」
「その研究施設で迎え撃つことが可能ってことね」
 と、ニーナが後を請け負った。

 問題はいかにして、敵軍より早く、その施設に辿り着くかだった。時間は残り少ない。
 しかし、活路はあった。
「これだ。今は当然廃線になっているが、この集落のすぐ側、ここから施設までレールが今も続いているはずだ。そして、その上を走る列車、みんなも知っているだろう?」
 バッテリーを搭載して、かつて乗客を運んでいたそのままに、集落の中央に一両の車両が置き去りにされていた。
 それを利用すれば、ロボット達の行軍に先んじて研究施設に辿り着くことができるだろう。
「でもあれをどうやって、線路まで?」
 ジャッキーの疑問は当然である。
「あれは、ある程度の平坦な道ならレール無しでも自走できるらしい。問題はバッテリーだ。この村に残る僅かなバッテリーを全部使って間に合うかどうか……」
 ケインの言葉にジャッキーが応えた。
「でも……やるしかないんだろ?」

 結局、来るべき集落の存亡をかけた危機に対して立ち上がったのはケイン達の3人と、たまたま集落に立ち寄ったケフィルだけであった。若者がそれ以外に居ないということもあるが、他の大人達はもはや絶望に疲れ果て、運命をありのままに受け入れる覚悟を持って静かに残りの余生を過ごすと決めたようだ。

 列車にバッテリーを運び込み、始動させた。一瞬の間を置いてコンソールに光が灯る。
 そしてそのまま、廃線まで移動し、線路に車輪を載せた。
「さあ、出発だ!」
 列車は走り出した。深夜の闇を切り裂き急行する。
 たった四人だけの迎撃軍。彼らを待ち受ける運命を鼓舞するかのように、列車は力強い走行音を響かせながら、暗闇の荒野を走り抜けていった。

id:gm91

ちょっと古典的だけど新谷かおる的ストーリーがツボ。文章も読みやすくてステキ。気になったのは廃車の車両は線路続きでも良かったかも。大宮工場の外に置いてあるD51みたいな感じで保存してあって、線路が途中で切れてるけどなんとか工夫してつないだ、みたいな。

2013/01/04 07:02:29

その他の回答9件)

id:sokyo No.1

回答回数1377ベストアンサー獲得回数97

ポイント42pt

『じぶんガラス』

僕は君のことなんて見てなかった
君の向こう側に別の人を見ていた
向こう側の誰かはどんどん仕草を変えて
それゆえ僕はいつも退屈せずにいた
そうして君のことなんてすぐに忘れてしまった

昼になると僕の心は浮き足立って
日差しに誘われて あちこち行きたくなって
君の向こう側がまぶしいほど
身近な方を見ないで過ごすみたいだ


僕は君のことなんて見てなかった
君が反射する僕自身を見ていた
平べったい自分は疲れた顔をして
それこそが君なんだと勘違いしていた
そうして誰のことからも目を背けてしまった

夜になるといつものリズムが浮かび上がって
トンネルに入って 自分が浮かび上がって
君のこちら側がまぶしいほど
鏡の国で向き合って過ごすみたいだ


僕は君のことなんて見てなかった
君が透かし 弾く 別の光を見ていた
いつしか僕は君を脳裏から消し去って
それでも君が大切だとかうそぶいた
そうしてここ1号車の窓辺にこもってしまった

朝になると古い記憶に光が差して
見逃してたなんて 認めたくなんかなくて
気がついたことはひとつだけだ
“ずっとそばにいた君はこの窓ガラスみたいだ”

触れてみたそれはとても冷たい
裏側で僕はまだ温かい

id:gm91

内容がちょっと詩的なので評価に苦しんだのですが、情感が良い感じにお題を昇華させていますです。

2013/01/04 07:02:46
id:grankoyama No.2

回答回数560ベストアンサー獲得回数170

ポイント43pt

「ほんとに帰るのか?」
 荷物をまとめる作業を黙々と続ける私に向かって、彼が問いかけてきた。痺れを切らしたんだろう。
 お見合いをするから、明日の早朝から実家に帰ると告げた時、彼の表情は面白いように変わった。はじめは小さな驚きが現れ、悩むような顔つきへ、そして半分諦めたような複雑な表情へ。
 そうか……とだけ告げて、以来口を閉ざして、私をただ見つめていた彼だったのに、いざこうして荷物がまとまり始めると、私の言葉に実感が出てきたのかも知れない。
「そうよ」
 と私は冷たく言い放つ。
 彼との付き合いは長い。高校の時からだ。それがお互い今は三十代の半ば。結婚もせずによくもまあだらだらと付き合い続けてこられたなと思わないでもない。
 それにはいくつか理由もあった。
 ひとつは二人とも過干渉をよしとせず、適度な距離を取って付き合ってこられたということ。
 もうひとつは、私がある意味で仕事の虫だということ。女だてらに研究職にその全てを捧げる毎日では、他に男を探している余裕もなければ出会いも少ない。
 それから、彼が生計を立てるだけの収入を得ていないということ。
 作家になるのが夢で、高校時代から文芸部に所属していた。といっても、それなりに運動神経もよく、人付き合いも上手い。なんて言うと文芸部員に怒られるか。バイト仲間ともよく遊びに行っているようだ。とにかく趣味で小説を書いている以外はごく普通の平凡な人間だ。適度な男らしさと優しさも兼ね備えている。
 旦那にするのになんの不満も無い。その収入という点を除いては……。

「お母さんがうるさいのよ。だってもう35でしょ? うちは妹と二人兄弟だから、跡取りの問題もあるし……。妹の彼氏は養子に入る気なさそうなんだって。もうじき結婚するらしいけど。それで、降って湧いたように、私のことを気に入っていて婿養子に入っても良いって言ってくれている人が突然出てきちゃったもんだから。浮かれてるのよ、お母さん。毎年毎年、早く孫の顔を見せろって、そればっかりなんだもの」
「お前は……その……なんだ。その見合いで仮にだな、その……見合い相手がそこそこいい奴で……仮にな、魅力を感じたりしたりしたら……」
 彼はそこまで言って言いよどんだ。
 はっきり言えばいいのに。私には彼の生活を支える覚悟は出来ている。彼との子供を作るのは難しいかも知れないけど、籍を入れてしまっても全然構わないとずっと思っていた。
 結婚に消極的だったのは彼のほうなのだ。
 プロの作家として食べていけるようになるまで結婚はしない。といっていた若かったあの頃。
 それが、なんとかという賞を取るまでは……に変わり、一冊でも本を出すまでは……ひとつでも受賞するまでは……と妥協を繰り返してきたものの、彼の作品は一向に日の目を見る気配が無い。
 夢を諦めきれないのか? それともプライドなのか。
 なんにせ、彼は、私のことを愛してくれ、大事にしてくれるのに……。
 こと、結婚になるとしり込みしている。
 お見合いのことは、そんな彼の本当の気持ちを探るためにした話でもある。
 これで、止めないような男なら、ほんとに見限ってやるって言い切れないぐらい彼に情も移っちゃってるんだけどね。

「お見合いキャンセルできないかな?」
 と彼がぽつりと呟いた。
「それは無理よ。もうレストランも予約入れちゃってるし、体裁とかいろいろあるじゃない?」
「お前のお母さんには俺が言うよ」
「そんな時間はないわよ。現地に直接行くことになってるの。始発で出てもぎりぎり。そんな重要な話、電話なんかじゃ済ませられないでしょ?」
「深夜バスがある! 深夜急行バスに乗れば、明日の朝には、お母さんに会えるんだ。そこで俺……言うよ。お前のことは俺がちゃんと面倒見るって」
「それってプロポーズ?」
「そうとらえてくれて構わない」
「面倒みるってどうするの? 夢は諦めるの?」
「諦めはしないけど……でも、仕事を探す。ちゃんと稼げるところを。仕事をしながらでも小説を書くことは続けられるから……」
「お金のことは心配しなくてもいいわよ。私の稼ぎで十分暮らしていけるわ」
「それじゃあ、俺の気がすまない」
「私はね、夢を追い続けるあなたが好きなの。仕事なんて始めちゃったら、小説を書く時間なんてなくなっちゃうわよ。ただでさえ……それなりに時間がある今でも全然芽が出ないんだから……」
 そうはいいつつ、私は彼の小説が好きだ。応募前に必ず読んで感想を言っている。彼は律儀にその感想を聞いて、作品に反映させてから応募している。
 ある意味では私のために小説を書いてくれているのだ。
「でも……それじゃあ君のご両親に……」
 どこまでもプライドや世間体を気にする奴だ。どこかで開き直ってくれたら、もっと上手くいくのに。
 でも、彼の気持ちはわかった。やっぱり私のことはちゃんと考えてくれている。
 小さな結婚式を挙げて、ふたりでこじんまりと暮らすのも悪くないかもしれない。
 両親だって、私が言えば納得してくれるだろう。
「わかったわよ。お見合いには行く。でもきちんと断ってくる。それからお父さんとお母さんにも言っとくわ。ちゃんと結婚相手が見つかってるってね。近いうちに結婚するからって。それでいいでしょ?」
「だけど……」
「お金のことなら心配しなくていいわよ。私の収入もあるし……。それにこれからあなたの作品に感想を言うのを止めにするわ。私の意見を聞かないで応募したら大丈夫。実はあなたの作品って結構評判いいのよ。ためしに私の意見を取り入れて改稿する前の原稿をいくつか出版者に持ち込んだことがあるの。どれも好印象だったわ。わたしの趣味ってどこかおかしいみたいなの。だから、私の望むストーリ、結末に変えちゃうと結果が出ないだけみたいなのね。こないだ送った原稿も、もし良かったら出版しないかって言ってきてるところがあるけど……。どうする? 連絡先教えようか?」
「な……そんな……」
「ごめんね。今まで言い出せなくて。いつも書いた小説を私好みに書き換えてくれることが嬉しくって。それに覚えてる? 高校の時に約束した事。あなたが本を出したら、なんでもあなたの約束をひとつ聞くって言ってたの?」
「ああ、そんなこともあったっけ……」
「あなたの約束はわかりきってたわ。私が仕事を続けてるの嫌いでしょ? 結婚したら女は家庭に入るのが当然だってずっと言ってるもんね。だから私から条件がひとつ。あなたの小説で食べていけるようになるまでは、私は仕事を続けるわ。ひょっとしたらそれからも。だからあの時の約束は無しってことで。それでいい?」
 それだけ言って、私はノートパソコンの電源を入れて、とある小説賞のサイト開いて彼に見せた。
 そこには、大賞作品として、彼の作品の名前が掲載されていた。作者名は彼ではなくって私の名前。
「ね? 大賞作は出版決定なんだって。おめでとう! でもこれはあなたの本じゃないわねぇ。私の名義で出版されることになるから。なんでも女流作家ってところも話題になりそうなの。もう何度か打ち合わせに行って、話しが進んでるの。でも私って小説なんて書けないから、作品の修正ができなくって。今度編集者にあったらほんとのことを言うわ。あなたが書いたって。でも発表しちゃったから、ペンネームは変えられないでしょうねぇ。ごめんね。あなたの夢を奪っちゃって」
 私はにんまり微笑んだ。私も一応文芸部に所属していた。ペンネームもその頃のものを使っている。
 それで、彼と賭けをしていたのだ。私の名義での本が出版された時には彼になんでも言うことを聞かせるという賭け。
 私は賭けに勝った上、理想の伴侶を得たことになる。

id:gm91

お題の処理がちょっと強引だけど、物語としてはまとまってて読みやすいです。
嫁さんが、出版や受賞を隠してる件はいくらなんでもひど過ぎるので意外と評判いいのよねくらいにしておいた方がいいかも。でもまあココがストーリーの見せ場なのかもしれんしなあ、複雑。
更にどうでもいいですが嫁さんが某篤姫の脚本の人と被ってしゃあない。

2013/01/04 07:03:04
id:kobumari5296 No.3

回答回数60ベストアンサー獲得回数4

ポイント37pt

 葛城美穂はガタンゴトンと気持ちの良い電車のリズムに乗せられて、とある場所に向かっていた。現在夜中の十一時。時期が時期だけに急の用で新幹線は取れず、深夜を走る急行電車しかとれなかった。それでも個室をとれたのは不幸中の幸い。美穂には男一人と、女一人の連れがいた。
「真っ暗……少し怖いな。」
「美穂、少しは寝たら?美穂がいくら睡眠時間を削っても、時間は早くならない。寧ろ体感時間は遅くなるよ。」
「あれ、綾乃。起きてたんだ。」
 彼女は小塚綾乃。美穂の大学時代からの友人である。そして、その隣で呑気に寝ているのは、もう一人の連れの男。坂本求(もとむ)。彼も大学時代の友人だ。昨今、綾乃ほどの付き合いはないものの、青春時代を共に過ごしたかけがえのない友人である。
「求を見てみなよ。自分の幼馴染に久々に会うっつーのに、この様よ。」
「求はマイペースだからねぇ……だからかな。賢斗と気が合ったのは。あいつもマイペースだったし。」
「美穂……」
 三人はこれから、美穂の元恋人・桜木賢斗の結婚式に向かう。

 自然消滅だった。大学を飛び級した賢斗と普通の女子大生だった美穂は、段々と逢う機会も減り、連絡さえ取らなくなった。大学二年の秋、卒業が決まったと噂で聞いた。それきりだ。だからと言って美穂は賢斗に未練と言うものを持たなかった。物理的に離れる前から、心は少しずつ離れていっていたのかもしれない。
「ハワイみたいだったよ、あんたら。」
「常夏。」
「違うわよ。よく言うじゃん、ハワイは遠い未来、日本に引っ付くって。あんたたち表向きは仲がいいように見えたけれど、あたしの目には、恋愛っていうアメリカから別の国に引っ張られる、島に見えた。」
 食堂車から帰って数時間後、お飲み物はいかがですかと言われて注文したロイヤルミルクティーは冷めきっていたが、美穂はそんなことは気にせずそれに口を付けた。カップに口紅がつく。この唇が、数年前は賢斗のそれについていた。それは紛れもない事実。
「我が親友ながら、ケンも酷いよなぁ。元カノだぜ?普通送るか?結婚式の招待状なんて。嫁さんも傷つくだろうに。」
「あら求、起きてたの。」
「お前らの声がでかいの。」
 数週間前、三人の元に届いた桜木賢斗の結婚招待状。まったく意味が分からないけれど、青春時代を一緒にいた三人は、あいつらしいと苦笑し、自然とペンは丁寧に“御”の字を消して、出席に丸を付けた。今回一緒に行くことになったのは、綾乃が二人にメールをおくり、はたらきかけたからだ。
「みーちゃん、いいのかよ。」突然、求の声に棘が出た。「なぁに?」
「俺は、あいつ好きだけどさ。あ、ゲイってわけじゃなくてね。でも、みーちゃんにとっては元彼なわけでしょ。辛くないのかい。」
「いいのよ、本当に吹っ切れてるんだから。」
「あたしが保証する。大丈夫よ、求。」
 それでも求は心配なようで、ニコリと笑う美穂の目を逸らすことはしなかった。営業マンの求は、これまでの経験で人の感情は、目に現れるという持論を持っていた。
「みーちゃん、彼氏は?」
「いないよ。大丈夫だって。あたしはね、決別しに行くのよ。過去と。」
 思えば美穂は、未練こそないものの賢斗を忘れた日はなかったように思えてならなかった。自然消滅いという、なんという情けなさ。自分に魅力がないのだと当初は思ったりしたが、時がその氷の塊を崩していくことに――そして、この大切な友人二人に幸せを覚えていた。
「賢斗も私も、新しい道へ進むのよ。賢斗は、私に自分のことを忘れろって、そういう理由でこの招待状、くれたんじゃないかな。あの人、優しさのベクトルが違う方を向いているじゃない。だから、俺の晴れ舞台を見ろって、悔しければお前も結婚してみろって、そう言いたいんじゃないかな。ま、お生憎様。私はもう、あいつのモノじゃないし、そうなるつもりもないけれど。」
 美穂は一気にまくしたて、ロイヤルミルクティーをガブっとひと飲みした。現実に素直でシビアな美穂。綾乃と求は顔を見合わせ、安心してお互い口角をあげた。
「そういえば、賢斗ってさぁ……」

思い出話に花が咲き、外を見ると、もう朝だった。
「見て見て!」「なんじゃい綾ちゃん。」
「見事なり晴天。真っ青な綺麗な空……」
 美穂に対する深夜による心の取り調べは終わった。もう、心の中にはこの綺麗な空のようでしかない。
「あいつ、雨男なのに。」求が笑う。
「お嫁さんが全てかき消したんじゃないの。俺様賢斗君が、尻に敷かれてたりして。」綾乃も笑う。
「賢斗……幸せになれるね。」美穂も、笑った。怖いぐらいの深夜の暗闇が、すべて持って行ってくれたのかもしれない。友人たちの優しい不安と、美穂のゆるぎないはずの決心を薄く覆う不安を。
「おーい!」
「あ、賢斗!」

 結婚おめでとう、賢斗。

id:kobumari5296

講評希望します。中辛でお願いします。

2012/12/31 07:54:41
id:gm91

「美穂に対する深夜による心の取り調べ」と言うのが話の主題なのであれば、美穂のセリフだけじゃなくて内心の描写がもっとあると良いかなと思います。夜行で旅する若者ってな雰囲気はいい感じです。

2013/01/04 07:03:22
id:misato385 No.4

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ポイント47pt

『駈ける』

 「お嬢さん、もう夜も遅いんですから、お帰んなさいな。いくら城下町が安全だからって、深夜は何が起こるか分からないんですよ」
駅員がそう言ってランプの油を足しながら困った顔をした。確かに、底抜けに明るい城下町でも、路地裏などは昼間から酔っぱらった男や、ちょっと怪しい商いをする者が居る。しかし彼女は帰るつもりなどなく、微笑んでまた線路の先を望んだ。便りの通りなら、次に来る急行列車に乗っている筈だ。
 「軍学校を卒業したと聞いたんです。彼を一番にお迎えするって約束したの」
それを聞けば反対する者は誰も居ない。この国の男児は軍学校に通うことが義務付けられており、6年は帰ってこない。その帰りを待った健気な少女を、そして彼女に迎えられるであろう青年を邪魔しようなどとは思わないだろう。駅員は溜息を吐くと、小さな飴を二つ取り出して彼女の手に握らせた。
「二人で食べると良い。私は近くに居ますから、何かあったら呼んでくださいね」
彼女は彼に頭を下げて、外套の前をしっかり閉め、また遠くから来るはずの光を待った。

 城下町の商家で父親が運んできた品を納めている間、彼女――ノノアはただ暇を持て余し、そこの息子であったマチアスに遊び相手をしてもらっていた。一つ下の彼は幼いノノアのお転婆ぶりに付き合わされてもいつも笑顔で、いつまでも「機織りの娘さん」としてしか見てくれなかった。だが、軍学校に行く前に駅に迎えに行くと約束できた。それだけでもノノアにとっては大きな進歩であり、この3年間を待つ間に恋へと変わった想いを今日伝えられるかと思うと、嬉しくもあり、緊張もした。
 3年間だ。弱虫で木登りすら上手くできなかったあのマチアスが、飛び級して軍学校を卒業したという報せは信じられないものだった。成績も優秀で、武術も群を抜いて上達したと。入学したての頃何度も送られてきた便りにはいつも「帰りたい」の文字があったが、ロビンという名の友人の話が書かれた便りを最後に突然何も寄越さなくなり、信頼できる仲間もでき、精神も鍛えられたのだろうと思った。
 急成長を見せた幼馴染に戸惑いを隠せないが、ノノアもまた3年の間に女らしくなっていた。母親に機織りを教わり、知り合いの染物屋や仕立て屋などに洒落た服を仕立ててもらったり。近所の娘たちと遊べば花摘みや飯事ばかりで、お転婆な彼女も少しずつ大人しく女らしくなった。16にもなれば言い寄ってくる男もできたが、ノノアは未だマチアスに想いを寄せていた。

 遠くから光が闇を射て、列車が姿を現した。ゆっくりと煙を上げて滑り込んだ黒い塊は、扉を開けて人を吐き出す。ノノアは成長した彼の姿を見つけられる自信がなかったが、降りてきた10人ほどの人の中に、それらしき姿は見当たらなかった。さっと血の気の引く思いがして、慌ててひとりひとり声をかけていくが、皆知らない人だった。列車の中も見たが、深夜の空いた車両には年の近い男子は一人も居なかった。
「あの、私と同じくらいの年の男の子を見ませんでした? 軍学校から今日帰るはずなのです」
人の良さそうな中年男性に訊くと、彼は首を横に振って思い出したようにこう言った。
「平原を駈ける馬を見ました。軍学校の最寄りの駅のあたりです。人が乗っているのは見えましたが、少年かどうかは分かりません。しかし、軍学校で貰う黒い馬でした」

 礼も言わずにノノアは駈け出した。彼の失踪を報せんと、全速力で。何度も二人で夕日を眺めに登った大樹も、水遊びをした小川も視界の隅に飛んでいき、寝静まった住宅街も、酔っぱらいの声の挙がる路地裏も過ぎて、表の通りに出る。月が冷たいほど眩しかった。広場は昼の賑やかさを失い、窓の明かりすらももう消えた店ばかりで、彼の家である店だけが息子の帰りを迎えようと明かりを灯していた。
 「おじさん、おばさん!! ノノアです、開けてください!!」
戸を叩くが返事はなく、裏口なら気付いてもらえるだろうかと薄暗い道を曲がろうとした、そのとき。

 青く光る眼が見えたと思った瞬間、ノノアの身体は『音一つ出さずに』石畳に叩きつけられ、宙に跳ね上がった。意識の途切れた彼女の目が最後に映したのは大きな黒い手――魔物の手だった。街に姿を現すことのない魔物が、どこからか紛れ込み、人を襲ったのだ。「唖」と呼ばれるそれらは音を喰らう。道を曲がった先の建物は幾つか既に倒壊しており、魔物の通った後には赤黒い血が点々と垂れていた。転がされたまま呻く人の姿も、ノノアの姿も、魔物の陰に飲まれて黒く沈んでいく。
 「はああぁぁっ!!」
ふいに背後から浴びせられた斬撃によって、魔物は動きを止めた。突然現れた少年は大剣を魔物の胸に突き立て、とどめを刺す。断末魔の叫びを挙げ灰となって散った手から解放されたノノアを彼は受け止め、そっと地に寝かせた。外傷の少ないことを確認し、ほっと溜息を吐く。何事かと近くの店から人が現れるのを見ると、彼は急いでその場から離れ、物陰に隠れた。
 「何とか間に合った……」
「それにしても、城下町まで入れるようになるなんてね。闇の力がまた強力になってきてるんだわ」
へたりと座り込んだ少年の服のポケットから、小人の少女が顔を出す。二人は騒ぎを聞いてかけつけた人々を見ながら、小声で囁いた。
「急いで神殿を目指しましょう。このままじゃ、音の無くなってしまう日までそう遠くないわ」
「分かってるよ。この街の近くなんだろう? すぐに着くさ」
二人は互いの瞳を見詰め、覚悟の程を示し合い、暫くして立ち上がった。少年のまだ幼さの残るその顔には似合わない、重たい何かがはっきりと表れ、またそれは固い決意を感じさせた。
 「行くよ、ロビン!!」
朝日が昇らんとする東の空は花色に染まり、少年の影を優しく抱き寄せながら光を大地に降り注ぐ。

 全てを背負うには、まだ若過ぎた。

id:misato385

結局突っ走っちゃいました。うーん、難しい。
講評お願いします。そうだなあ…マスターのブレンドコーヒーが飲みたいです。
さとうとミルクもちょっと入れといてください。

2013/01/01 11:48:11
id:gm91

ストーリーがまとまってないが、設定に奥行き感があるのが良い。続編を読みたい。

2013/01/04 07:03:54
id:kobumari5296 No.5

回答回数60ベストアンサー獲得回数4

ポイント43pt

 人類を揺るがす隕石衝突の日――“アースデッド”から数年。ほぼ壊滅した地球を立て直したのは、機械の星から来た異星の科学者たちだった。かつての緑という栄光を失った地球は、異星の科学者たちによって“第二の機械の星”へと変貌を遂げた。濃い大気によって太陽光が遮断され、暗かった空は、彼らの恐ろしい科学力によって映像という形で青空を取り戻した。生き残った数千の地球人のために、彼らは一人一体の人工知能から発達した、人造人間を与えた。それが、地球を機械の星の彼らに委ねる為の交換条件だったのだ。

 それから数百年、地球人の人口もかつての半分程度に増え、機械の星から来た異星人は、地球からの撤退を決定した。新しく選ばれた異星の代表の意向だった――
「泣かないで……泣かないでください、彼方(かなた)さん。」
「“さん”、なんて言うなよ。リア……」
 北条彼方。日本国の古代の人物である尼将軍の子孫である。アースデットの日、日本は優秀な系統を受け継ぐ一族は生き残そうと、核のために作ったシェルターに避難させた。北条家は、地球の科学者として名をはせていたのだ。その何代目か、もう分からないくらいの当主の彼方にも、機械の星は人工知能を与えた。それが、リアだ。
「彼方さん、あなたにもう私たちは不必要です。地球はもう、私たちが手を加えなくても生きていける。私たちは、不必要なんです。」
「都合のいい話だ。こんな感情抱かせるなら、最初から出会わなければよかった……」
 大学で地球史を学んだ彼方はこの体制を不服と思っていたが、幼い頃から一緒にいたリアへ、次第に恋愛感情を抱くようになった。それはリアも一緒だった。最初は表情のない家政婦のような人工知能は、時と共に感情を覚えていったのだ。
「もう、行かなくてはならない。今夜零時、この家に来る電車に乗って、私は故郷に帰らなければならない。」
「お前が生まれたのは、地球だ。」
「彼方さん、私をかくまえばあなたは殺される。」
「それでもいい。」
 彼方はリアを力いっぱい抱きしめる。止めどなく、瞳から涙が流れる。それはリアも同じで、一生懸命堪えていた。これ以上、愛しい人が傷つかないように、肩を震わせ堪えていた。
「離して……ください。」「嫌だ。」押し問答だ。
 リアは、自分を抱きしめ涙を流す地球の男の髪を、優しく梳いた。一粒の涙が、彼方の髪にポツリと落ちる。それを見て、リアは覚悟を決めた。
「えいっ!」「リアッ!」
 最大の力で彼方を押したリアは、走って屋敷から出た。もう列車の音がしていた。彼方も夢中で追いかけるが、機械には勝てない。それが、この時代の現実だ。
「あれが……電車。」
「そう、あれがこの星から私たちの星へ唯一繋がる……深夜急行・ヘヴン。」
「リア!リア!」
 泣いて叫ぶが動かない、彼方の身体。リアが金縛りをかけているのだ。
「元気でね、彼方――」
 リアは列車へ足を踏み入れる。

「リア様、地球のことは忘れましたか?」
「さぁ……」
 地球を去って一週間。ようやっと故郷が見えてきた列車は、泣く者あり、喜ぶ者あり、とにかく騒々しかった。ボーイがワインを注ぎにリアの個室を訪ね、分かりきっていることを聞いた。穏やかなリアでさえ、少し腹の立つ話題だ。
「懐かしいわね、この味。」
「はい、地球ものでございます。」
「あんたって嫌な男……彼方とは大違い。」
「傷つくだけかと思いますが、これもマニュアルなのでお許しを。地球の様子、御覧になりますか?」
「……ええ。」
 ボーイがリモコンを取り出し、スクリーンに向けてボタンを押した。
『坊ちゃま。リア様はいかれたのでしょうか……』
 彼方の側近だ。自分がいなくなると決まった時、一番にその旨を伝えた相手でもある。
『リア?何のことだ?』
「リア様、あなたはもしや……!」
「そうよ。消したわ。」
彼方に、人工知能の記憶はなくなっていた。リアの残した最後の愛(ちから)だ。彼女も、ちゃんと彼を愛していたのだ。愛する男が流す涙を、見たくなかったのだ。
「彼に私は……必要ないもの。」
「余計なお世話ですが……それでも、彼方様にとって、あなたの存在は、あなたが生まれた時から必要とされていたのかもしれません。」
「え?」涙が出るのを抑えるためにスクリーンから目をそむけたリアが、少し驚いてスクリーンを見た。
『早く仕事をしろ。追いつかなくなるぞ、研究所の建設。下がうるさいからな。』
「我々の感じる一週間は、地球人の一年に相当します。北条家は、彼方様を筆頭に人工知能の開発を始めました。家政婦型のロボットの用で……我々とは、精度がかけ離れていますが。」
「どうして……消してきたはずよ、私の記憶……」
『坊ちゃま、何故そう急がれるのですか?』
『興奮するんだよ、人工知能を考えるだけで。なんだか……懐かしい気がして。』
「彼方……!」
 彼方はリアを忘れた。しかし、心が憶えていた。リアと暮らした日々。ぬくもり。愛。
『思うたび心が揺れるんだ。』
「私も、よっ……」
 リアの瞳から涙がこぼれる。ボーイは黙ってそれを見ていた。窓の外はもう、脳のチップに刻まれただけで、見たことのない故郷が広がっている。

 愛だとか、ぬくもりだとか、そんな形のないものに縛られる、哀しいけれど尊い心。
 それを大事に大事に、本能で守っていく。
 人間とはそういうものであってほしい。少なくともリアは、そう思って故郷の土に自分をのせた。

id:kobumari5296

また書いてしまいました……BGMは紅白です。講評希望です。皆様、良いお年を。

2012/12/31 22:57:07
id:gm91

設定、ストーリー共に楽しめました。松本零士的ストーリーがちょっとツボ。文章がちょっとギクシャクしてるのがちょっと残念。

2013/01/04 07:04:20
id:takejin No.6

回答回数1543ベストアンサー獲得回数203

ポイント44pt

『題未定』

私の視界が、暗くなりそして赤くなった。
顔に衝撃を受けると、また視界が暗くなった。気を失う様な感じがした。
それを確かめる間もなく、私は気を失っていた。
目覚めたのは、車の中だった。
「病院に向かってる。気を確かに持て。 」
私がもたれかかっているのは、報道を支援しているNPOの冨樫さんだった。
「カメラ、カメラどこですか?」
「わからない、君の倒れていたところには無かった。 」
「あの人たちは?監視団はどうしてます?」
「反政府勢力に、拉致されてしまったよ」
「なんてこと。」
「発砲するような武装集団を拘束するっていう声明が、さっき」
「え、撃ってないのに」
「証拠がないんだ。しょうがない」
「…」
私はそのまま眠ってしまったらしい。


見上げると、シミとひび割れと弾痕のある天井だった。割れた窓から青空が見える。
どこかでラジオが鳴っている。早口のアラブの言葉は、ノイズとがなり立てるだみ声で、何を言っているのかほとんど聞き取れない。
ケータイのメールがたくさん届いていた。
富樫さんからだ。
『明日なにか動きがあるかもです。不穏な情報が飛び交っています。あとで伺います。』
不穏て。
ここでは、命の価値が紙幣よりも低い気がする。
不当に、彼らに何かあってはならないとは思う。
でも、情報を世界に発信しようとしても、絵が無い。
「絵があれば…」
私は、ほほに触れた。目の周りに違和感がある。
大きく腫れているにちがいない。
「あの時」
ぶつかる前に見た、目の前の画面。
私は、左腕に刺さっている、点滴を抜いた。


暮れかけた市街地は、がれきでいっぱいだった。砲撃でえぐられた壁の向こうには、床が無い。
たしか、ここだった。この壁の穴から構えていた。
恐る恐る床の穴を覗き込むと、はるか下にコンクリート片と黒い何かが見えた。
取って返して、階段を下りる。下についたとき、遠くで砲撃の音が始まった。
「確か、ここ」
薄暗くて、床の上の石ころもよく見えないところで、手探りで物陰を探す。
ふと、柱の向こうから小さな声が聞こえてきた。とぎれとぎれに歌っているようだ。
この歌、聞いたことがある。
足音を立てないように、柱を回り込むと、そこにはボロをまとった少年がいた。
ラジオをイヤホーンで聞いているらしい。夢中で、手に持ったカメラをいじりながら、歌を歌っている。
私は、自分がその歌のサビを、思わず口ずさんでいることに気づく。少年も、こちらを向いた。
彼は口を開けて、私を見ている。
私は堂々と、ラジオの歌を合唱する。
「この世界から、脱獄させてやる。」
少年も歌う。
「ミッドナイトエクスプレス」
私は微笑んで、少年が手に持っているカメラを指差した。
首を横に振る少年に、3枚コインを渡す。
はにかんだような、うっすらと浮かぶ微笑みを返し、彼はカメラを手渡してくれる。
「ミッドナイトエクスプレス」と言いながら。
その背中を見ながら、私はつぶやいた。
「ありがと。ケン。でも、どうしてあの曲が?」


メモリの画像には、反政府勢力の不当な発砲と、無益な殺傷状況が映っていた。
「富樫さん、この記事でどうかしら」
揺れる車内で、ノートパソコンに打ち込みながら、私は問う。
「うん。これなら何とかなるんじゃないか?」
冨樫さんが請け負う。その記事を世界中に送信しながら、私は鼻歌を思わず歌っていたらしい。
「ん?その歌は」
富樫さんに聞かれて、私はその歌に気づいた。
「知ってます?」
「知ってるも何も、この曲の売り上げの10%は、このNPOの資金になっているんだよ。」
ケン君。
「ユミさんこそ、ヒットしてるの知らないのに、歌えるの?」
「え、ええ。」
富樫さんは感慨深げに言った。
「君も、ミッドナイトエクスプレスを走らしたんじゃないかな?」
「え?」
「その写真でさ、囚われの人たちを開放できるんじゃないかってことだよ。」
私は、大きく割れた長い望遠レンズを抱えて、富樫さんを見つめた。
「その画像、世界を動かせると思うよ」
私のカメラのディスプレイには、カメラにライフルを向ける人物と、まっすぐカメラに向かって飛んでくる弾丸が写っていた。

id:takejin

とりあえず、第一稿ですが置いておきます。
ま、直せるかどうかわからないので。

2013/01/01 00:12:17
id:gm91

設定、ストーリー共に楽しめました。演出がいい感じですが、文章がちょっと雑でござるな。時間切れでしょうがああ無情。

2013/01/04 07:04:48
id:takejin No.7

回答回数1543ベストアンサー獲得回数203

ポイント29pt

背の高い男性が、都会の裏通りをゆっくり歩いている。
周りを見回し、懐かしがってい様子だ。
小さな映画館の前で止まり、看板を眺めている。
「こんな映画やってるんだ。久しぶりだなぁ」


自動販売機で、切符を買って入口へ。
カウンターの女性に切符を渡し、半券を受け取り、ポップコーンも買っている。
「いやいや、一般人ですって。普通の人、普通。」
一つしかない入り口から、姿を消した

誰も座っていない劇場を眺め、男性は真ん中の席に座る。
ポップコーンを置く場所を探す。
「あれ、置けないや。やっぱ小さいな。」
周りを見回して、誰もいないことを確かめると、
「こんなとこで、映画見る人なんていないよねぇ。DVDでいいよねぇ」
ブザーが鳴って、場内が暗くなり始める時、人影が入ってきた。
「ここよろしいですか?」
と男の隣に座る。
埃っぽい大きな荷物を自分の隣の席に置き、左手のコーラを置こうとする。が、置く場所がない。
「ここ、置けないみたいですね」
と男が小声で言う。
女性は小さく頷き、こう言った。
「この映画の題名、すごいかっこいいですね」
はっと横を男は見る。微笑む彼女の横顔を見て、男は言う。
「どんな映画かは、見てみればわかるよ」


場内が暗くなり、映画が始まった。
そのタイトルは、
「ミッドナイト・エクスプレス」

他4件のコメントを見る
id:takejin

成人式終わったらね。
ブログにでも。

2013/01/04 09:20:25
id:gm91

わくわくo(^^o)(o^^)o

2013/01/05 23:40:01
id:grankoyama No.8

回答回数560ベストアンサー獲得回数170ここでベストアンサー

ポイント48pt

『深夜急行#1』

 さる大国のメインコンピュータの暴走に端を発した世界戦争。国対国、つまりは人間対人間の争いから、ロボット対人間、さらにはロボット対ロボットと戦局は混乱を極め世界は崩壊を迎えた。
 僅かに残った人間達は、ちいさなコミュニティーを築き、ロボット達の襲来に怯えながら、細々と暮らしていた。
 ここにひとつの集落がある。突然の来訪者によって、にわかに緊張感が高まっていた。

「あのじいさんの話が本当だとすると、俺たちの集落も長くは持たないということだ」
 そう取りまとめたのは、戦闘にも長け、若者達のリーダー格でもある、ケインだ。
 じいさん……ケフィルと名乗った旅人は、元々は武器職人であった。彼は、自身の技術を活かして、強力な武器を携えながら世界を旅していたらしい。
 彼が見たのは、大規模なロボット達の行進。目的地はケイン達の集落である可能性が高いという。
「そんな……せっかく畑も開拓も軌道に乗って、ここでの生活も落ち着いてきたところなのに……」
 ニーナが言った。彼女は、数年前に記憶を失った状態で、この集落に辿り着いた。それ以来、ケインに付き従うように、行動をともにしている。
 そもそもこの集落の年配の人間達は保守的だ。機械、つまりはロボット達との無益な争いを避け、平穏を望んで暮らすことを目指していた。しかし、そんな暮らしは若者達には刺激が少ない。
 ケインやニーナ、それに少し年少のジャッキーなどは、武器を手にして、集落の周辺を見回るのがもはや日課となっている。本隊とはぐれたロボットや、自律機構に支障をきたし、目的地の定まらないロボットなどを発見してはハントしている。
 しかし、旅人ケフィルの伝える話は、そんな安全に裏打ちされた彼らの冒険心をぎりぎり満たすような内容ではなかった。
 ごく稀に、ケフィルのような旅人がもたらす噂話によると、人々は様々な箇所で同じような集落を作って、細々と暮らしているようだが、ロボット達の気まぐれで攻撃を受け、滅ぼされたところも数多いという。
 今、まさに、ケイン達の集落も同じ危機にさらされている。

「俺たちの村にはそんな大勢のロボットを相手にするだけの武器も弾薬もないじゃないか!」
 ジャッキーがヒステリックに叫ぶ。
「可能性はひとつだけだ……」
 そう言いながら、ケインは地図を広げた。
 そこにはケインたちの集落、そしてその近辺にひとつの×印が付けられていた。
「ここって……?」
「大戦以前に存在していた何かの研究施設だという。ケフィルから聞いた話では、軍事工場だった可能性が高い。そして、そこには大規模な破壊兵器が眠っているはずだ。保存状態さえよければ利用可能なはずだ。もしそれがあまりにも大きく動かせないものであったとしても……」
 そう言いながら、ケインは地図の一点を指し示す。
「ケフィルの言った、ロボットの一団の進行ルートに大きな迂回が無ければ……」
「その研究施設で迎え撃つことが可能ってことね」
 と、ニーナが後を請け負った。

 問題はいかにして、敵軍より早く、その施設に辿り着くかだった。時間は残り少ない。
 しかし、活路はあった。
「これだ。今は当然廃線になっているが、この集落のすぐ側、ここから施設までレールが今も続いているはずだ。そして、その上を走る列車、みんなも知っているだろう?」
 バッテリーを搭載して、かつて乗客を運んでいたそのままに、集落の中央に一両の車両が置き去りにされていた。
 それを利用すれば、ロボット達の行軍に先んじて研究施設に辿り着くことができるだろう。
「でもあれをどうやって、線路まで?」
 ジャッキーの疑問は当然である。
「あれは、ある程度の平坦な道ならレール無しでも自走できるらしい。問題はバッテリーだ。この村に残る僅かなバッテリーを全部使って間に合うかどうか……」
 ケインの言葉にジャッキーが応えた。
「でも……やるしかないんだろ?」

 結局、来るべき集落の存亡をかけた危機に対して立ち上がったのはケイン達の3人と、たまたま集落に立ち寄ったケフィルだけであった。若者がそれ以外に居ないということもあるが、他の大人達はもはや絶望に疲れ果て、運命をありのままに受け入れる覚悟を持って静かに残りの余生を過ごすと決めたようだ。

 列車にバッテリーを運び込み、始動させた。一瞬の間を置いてコンソールに光が灯る。
 そしてそのまま、廃線まで移動し、線路に車輪を載せた。
「さあ、出発だ!」
 列車は走り出した。深夜の闇を切り裂き急行する。
 たった四人だけの迎撃軍。彼らを待ち受ける運命を鼓舞するかのように、列車は力強い走行音を響かせながら、暗闇の荒野を走り抜けていった。

id:gm91

ちょっと古典的だけど新谷かおる的ストーリーがツボ。文章も読みやすくてステキ。気になったのは廃車の車両は線路続きでも良かったかも。大宮工場の外に置いてあるD51みたいな感じで保存してあって、線路が途中で切れてるけどなんとか工夫してつないだ、みたいな。

2013/01/04 07:02:29
id:maya70828 No.9

回答回数1364ベストアンサー獲得回数139

ポイント43pt

『理想と現実に揺られて』

「早く、早く!」
バスの乗降口から顔を出して卓はイライラした様子で声をかける。
「うおっ、やべっ!」
栄治が荷物の詰め込みスペースにスポーツバッグを押し込んで乗降口に向かう。
「東京行きの夜行バスが出発します」
深夜急行の従業員がそう合図をすると
「ガシャーン」
とバスの扉が閉まる。
「ふぅー、ギリギリセーフ」
栄治はホッと胸を撫で下ろしながら一息つく。
「ったく。栄治は時間にルーズだよな」
あのなーと説教を言わんばかりの顔で栄治に言う。
「いや、これは日本が時間に正確なのがいけないんだ」
栄治の言い訳に卓がつっこむ。
「なんだよ、その言い訳。ここは外国じゃないし」
「とにかくコミケに間に合ったから細かいことは言わない」
栄治が今までの話をうやむやにする。
そう、時間上明日の朝は、アニメオタクが集まる同人誌の即売会、コミックマーケットの最終日だった。
お互い仕事の都合で最終日しか行けず年末最後のチャンスだった。
「まぁ、間に合ったからよしとしよう、とっとと席につこうぜ」
卓は栄治に席座るように促し、シート番号を確認する。
「おっ、ここだ。栄治」
二人は席につき、早速明日のお目当ての商品の話になる。
「明日到着したら速攻で並んでエモルちゃんの初回限定フィギュアをゲットだ。栄治お前は何が狙いだ?」
「うーん、俺は、コミケは初めてだからしばらく様子見かな」
「栄治~、相変わらず無計画だな~。そんな事言っているとあっという間に欲しい物がなくなっちまうぜ」

「ところで栄治、フィギュアゲットの興奮を鎮めてくれるような暇つぶしは持ってきたんだろうなー?」
「おー、頼まれていたトランプとかお菓子とか持って来たぜ」
栄治は背負っていたリュックサックをゴソゴソと手で探った。
「ゲッ」
栄治は青ざめた顔で卓に言った。
「バス横の荷物入れにスポーツバックごと入れちゃった・・・バスが着くまで取り出せないな・・・」
「バカやろー!」
卓は栄治の腕に思いっきりしっぺをした。おめ当ての商品で興奮しているせいかテンションが高かった。
「しーっ」
周りの乗客が二人にうるさいと警告する。
卓は、すみません、すみませんと謝って小声で栄治を責める。
「お前なぁー・・・お前のせいでこうなったんだから何か暇つぶしを考えろよ」
「わかった、わかったよ。今考えるからちょっと待てよ」
栄治はそう言うと腕を組んで考え始めた。
「ったく。行き当たりばったりな奴め」
卓は呆れた顔で栄治を見る。
しばらくして栄治の頭の電球がピカッとついたようにひらめいて口を開いた。

「そうだ、俺達で賭けをしないか?賭けに勝った奴は負けた奴に何でも一つだけ命令できるのはどうかな?」
「いいねぇー、特に俺の命令はエモルちゃんのフィギュアをおごってもらうことだがな」
メラメラとした闘志を剥き出しにして卓が栄治の提案にのってくる。
「賭けの方法は、トイレに行く時に後ろに座っている小太りの青年の前でワザとハンカチを落として『ごめんだってばよ』と言ってその青年がどんな反応をするか当てることにする」
卓が頷いて栄治に誰がハンカチを落とすか、青年の反応をどちらが先に予想するかを決める。
「栄治、お前のミスでこうなったんだからハンカチの落とすのはお前、先に予想するのは俺でいいな」
「いいぜ、卓。で、お前はどう予想する」
「そうだなー」
と卓は頭で考えた。
――たぶんこいつは俺達と同じオタクだ。そんなことで動じないだろう。よって・・・
「なんの反応もない」
「卓、そうきたか。じゃあ俺は裏をかいて青年はその言葉を聞いて引く方に賭ける」
「フフフ、栄治。ヤケになって大穴をついたな」
早速、栄治はトイレへ行き、その帰り際にハンカチを落として「ごめんだってばよ」と青年に言った。
青年は、
「・・・」
無言のままでその顔は・・・

なんと引きつっていた。

栄治は勝ち誇った顔で卓の席の隣に座って
「俺の勝ちだな、卓」
と言った。
「ちくしょう、てっきり俺達と同じオタクと思ったのに」
悔しがる卓に栄治が
「隠れオタクの卓の長い付き合いですぐに隠れオタクだと分った。表面上は引いているけど内心は嬉しそうな感じがしたよ」
と自慢気に言った。

「隠れオタクか・・・俺と一緒だな・・・」
卓は隠れオタクに特別な心情を持っているようだった。
「隠れオタクはいろいろと辛いよな・・・」
見かねた栄治は前々から卓に対して黙っていたことを勇気を出して言った。
「オタク自体は悪くないんだから後ろめたく感じる必要はないし、そう思う気持ちが良くないじゃないの?」
「・・・」
卓はしばらく黙って重たい口をようやく開いた。
「どんなに素晴らしい事言っても所詮オタクはオタク。現実は、学校の仲間内の会話でアニメの事について熱く語った時に『それってオタッキーじゃん』と笑われたり、アニメ即売で通りがかりの親子の会話が
子:『この大きいお兄ちゃん、アニメの人形で何で喜んでるの?』
親:『だめっ、近寄らないの』
と心にグサッと刺さる一言をかけられていのには変わりがない」
栄治が卓に語気を強くして言う。
「それは、お前が細かい事で気にし過ぎる性格なのと、現実を言い訳にしてお前自身が腐っているだけだぞ」
「そんな事を言えるのは・・・」
栄治の言い分に対して卓が続ける。
「オタクに対する社会の扱いが酷いことを知らないからだ。実際にエモルちゃんのように実際の女の子で遊んでみたくて誘拐したという事件も起こっているんだからな。お前の言い分は甘ちょろい戯言だ」
しばらく二人の間に沈黙が続いた・・・

 バスの前のシートに座っていた老人の男性が口を挟んだ。
「一部始終聞かせてもらったよ。余計なお世話かもしれないが・・・」
老人は続ける。
「わしもオタクじゃ。確かにオタクだからといって心まで腐ってしまうのもどうかと思うが、情熱的になり過ぎるのもどうかと思う。詰まる所オタクだからといって力まずにボチボチやっていくしかないと思うんじゃ」
その老人の言葉が異なる意見を持つ二人をバスの到着まで考えさせた。

 夜が明け目的地に到着した二人の顔に雨雲のような暗さはなかったが、晴天のようなすがすがしさもなかった。
今日の天気ように。

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id:maya70828

すいません。読み返したら凄く酷い文だったので途中からですが、申し訳ないです。
卓はしばらく黙って重たい口をようやく開いた~最後まで下記の文に差し替えて下さい。

2013/01/09 22:51:40
id:maya70828

卓はしばらく黙ってようやく重たい口を開き、
「どんなに素晴らしい事言っても所詮オタクはオタク。」
とゆっくりと話を続けた。
「現実は、学校の仲間内の会話でアニメの事について熱く語った時に『それってオタッキーじゃん』と笑われたり、アニメ即売会で通りがかりの子供が『この大きいお兄ちゃん、アニメの人形で何で喜んでるの?』と親に聞いた時に『だめっ、近寄らないの』と親がまるで危険人物のように言われたりするのには変わりがない」
栄治が卓に語気を強くして言う。
「それは、お前が細かい事で気にし過ぎる性格なのと、現実を言い訳にしてお前自身が腐っているだけだぞ」
「そんな事を言えるのは・・・」
栄治の言い分に対して卓が続ける。
「オタクに対する社会の扱いが酷いことを知らないからだ。実際にエモルちゃんのように実際の女の子で遊んでみたくて誘拐したという事件も起こっているんだからな。お前の言い分は甘ちょろい戯言だ」
オタクだからといって腐ってはいけない。だが現実はそうはいかない。
二人ともそれを分っているからこその意見だ。
それっきり二人はバスの到着まで黙ったままだった・・・

 夜が明け目的地に到着した二人の顔に雨雲のような暗さはなかったが、晴天のようなすがすがしさもなかった。
今日の天気ように。

2013/01/09 22:52:09
id:grankoyama No.10

回答回数560ベストアンサー獲得回数170

ポイント37pt

『深夜急行#2』

 廃墟と化した工場に辿り着いた彼らは、二手に分かれることにした。
 ケインとニーナは工場内部の探索を。ジャッキーは、ケフィルに伴われて、ロボットの進行状況を確かめるために、偵察にでかけた。都合の良いことに、工場の入り口付近にバッテリー式のバイクが放置されていたのだ。 かなり、古びた機体であったが、なんとか走行することはできた。

 崩れ落ちた外観にそぐわず、工場の内部はまだ、汚れはすれども、朽ちてはいなかった。ケインとニーナはとりあえず、中央ブロックへ向かう。
 コンピュータの端末が幾つも置いてある。
 予備バッテリーなのか、太陽光なのか、他の何かなのか、とりあえず、電源は生きていた。
「くそっ、動いていても……さっぱりわからねぇ」
 ケインがコンソールを叩き、吐き捨てた。彼には、いや彼以外のほとんどの若者は大戦前の生活を記憶していない。このように大きなシステムと対峙するのは始めてである。
 操作がわからなくても当然ではあるが、一刻を争うこの場面で、てぐすねを引いて、無為に時間を過ごすのはくやしかった。
 そんなケインの背後で、コンソールを眺めていた、ニーナが突然キーボードに手を伸ばした。
 ニーナの操作で画面が次々と変わっていく。しかしそこに映し出された文字は、ケインの知っている、学んで使用している言語とは異なるものだった。
「ニーナ? どうして動かせるんだ? それに……この文字……」
「ええ、読めるわ、何故だかわからないけれど……」

 しばらくニーナのオペレートで得た情報によると、この施設はやはり軍事工場であったようだ。それでいて一種の要塞を兼ねている。
 大出力のレーザー砲があるというのだ。レーザー砲のコントロールルームの位置までがわかった。発射方法まではここでは得られなかったが、後はコントロールルームで調べればよい。
 二人がコントロールルームに向かっている途中で、偵察に出ていたジャッキーが青ざめた顔で帰ってきた。
「やばい、やつらの進行は思っていたよりも早い! 後数時間でここに辿り着く!」
「それで、じいさんは?」
 姿の見えないケフィルを心配してケインが訊ねた。
「時間を稼ごうと、少し距離を置いたところで待ち伏せをしている。ロケットランチャーの弾が数発。それだけ撃ったら、また合流するって! それよりそっちの状況は?」
 ジャッキーの問いかけにケインは、
「レーザー砲があった。それを機動して上手く使えれば敵のほとんどを殲滅、いや全滅させられるかも知れない。でもそのコントロールルームへの路が……」
 ケインの見つめる先には、硬く閉ざされたドアがあった。
 コントロールルームはすぐ先なのだ。しかし、開け方がわからない。
「ケフィルのじいさんから預かってきた爆弾がある。これでこじあけられないか?」
 そう切り出すジャッキーに、ニーナが静かに首を振った。
「だめなの、そんなことをしたら、ここの警備システムが起動して、私達も閉じ込められてしまうわ……」
「くそ! どうすりゃいい……」
 壁を叩きつけるケインを見つめたニーナが意を決したように、目を閉じた。
 突然ニーナの指先辺りから、チュイーンという機動音が鳴り響く。
 ニーナは収支無言で作業を開始した。彼女の指先が割れ、複雑な機械がそこから現れる。
 そして、そこから幾束ものコード類が伸びて、閉ざされたドアの横にあるコンソールパネルに接続された。
 しばらくして、ドア横のコンソールに灯っていた赤い光が緑に変わったかと思うと、静かな音を立てながらドアが開いた。
「こ、これは一体……」
「騙していてごめんなさい。私は実は人間ではなかったんです。反乱を企てた機械たちよりもはるか昔に製造されていたアンドロイドなんです……」
「機械って……いまここに向かっている奴らの仲間なのか?」
 ケインが問いただした。
「いいえ、私達には人間に敵対する意思を持ちません。人間に奉仕するようにプログラミングされています」
「とにかく……これで集落は救われる。あとはレーザー砲をコントロールして敵を撃つだけだ!」

 ケインは、コントロールルームに駆け込んだ。そこで彼は知るだろう。彼も実は人間ではなく機械だったことに。
 世界には既に人間など存在していなかった。終末の直前に人間を演じる役割を担わされた機械たちが、人間と同じように暮らしていた。
 ケインは戦闘形のアンドロイドである。この施設の武装兵器は、そのオペレータにアンドロイドを使用していた。
 人間には操作できないのだ。ケインのような戦闘形のアンドロイドと神経接続することで始めてその機能を発揮する。
 そして、ケインのほかには戦闘目的に創られたアンドロイドは存在していない。彼は自身が人間であることを信じ続けるだろう。そして彼の守るべき集落に住む人々が人間であると信じ続けるだろう。そのためには、接近するロボットの軍隊を打ち滅ぼすしかない。しかし、それは人間だと信じているケインにはできないことだ。彼の本来の記憶を呼び覚ますことが必要なのだ。
 ニーナが目覚め、ケインが目覚める。
 徐々に人間がアンドロイドへと変貌していく。
 それでも生き残ったアンドロイドたちは自分を騙し、仲間を騙し、人間としての生活を続けるのだろう。
 何故なら、それが彼らに課された、今は無き人間達から与えられたたったひとつの命令なのだから……。

id:gm91

まさか続きがあろうとは。ストーリー展開がちょっとご都合主義な感じもしなくもないですが、藤子FっぽいSF設定は結構好きだけど、ちょっとまとめ切れなかったみたいな気がするような。あと、お題拾ってませんぜダンナ。

2013/01/04 07:05:35
  • id:takejin
    最後尾のコンパートメントは、どこですか?
    正直、この日程はむりそうだ。
  • id:gm91
    がんばれーまけるなT神さん
    もーえろT神さん♪
  • id:takejin
    手元にメモが3種類あるのさ。
    計画では、28日に第二稿が3本できていたはずなのさ。
    はいはいはい、リビングとお風呂場の大掃除はおわ、 買い物?待っていまい
  • id:misato385
    燃え上がーれー燃え上がーれー燃え上がーれーT神さんー♪
    そっか、もう大掃除の季節でしたね。
  • id:gm91
    燃・え・ろ!
    燃・え・ろ!
    燃えろ 燃えろ 燃えろ 燃えろ 
    たけじんさーん♪
  • id:gm91
    燃えろ たけじん 命懸け
    今日から明日へ まっしぐら
  • id:takejin
    なんすか、この応援歌の山は。
    素直に受け取っておきます。
    どもありがと。
    そして、あけおめ。
  • id:gm91
    あけおめです
  • id:misato385
    あけおめです。
    こちらは夜が明けたとこです。
    今年はあと十六時間は残ってるので何かしら何とかします。
  • id:kobumari5296
    あけおめです。
    新参者ですが、よろしくお願いします。
  • id:gm91
    あけおめ
  • id:misato385
    あけおめですー
    今年も迷走しまくりますが宜しく御願いします(^_^)ゞ
  • id:kobumari5296
    う~~ん、なかなかネタが浮かばない。
    なんて、ぼやいてみました(すみません)
  • id:grankoyama
    グラ娘。 2013/01/03 21:15:17
    よこせ! 講評。
  • id:gm91
    まいど!
  • id:gm91
    お待たせしました!
    BAおめでとさんです>殿下

    全体的に接戦でした。気分的には#4か#6がBAかと思ってたんですが集計すると意外(失礼)な結果に。
    個別の講評はボチボチ書くのでしばしお待ちを。
  • id:misato385
    グラ娘。さんおめっとうさんです。
    今回もレベルが高かった!! 読むの楽しかったです。
  • id:takejin
    なんでみな時間があるんだろう?仕事納めと年末の大掃除、正月準備、二年参り、初日の出、あいさつ回り、初詣… 全然暇ないし。
    参道でロープ規制でじわじわ進みながら、やっとこ書いた(というか吹き込んだ)のに…
  • id:gm91
    我が家の場合・・・
    仕事納め →時間切れ終了、また来年。どうせ終わんないし。
    年末の大掃除 →先週やっとくものさ
    正月準備 →31日に近所のイオンで買い物して終了ですが何か?
    二年参り →しない
    初日の出 →自宅で拝む。東向き万歳。
    あいさつ回り →禁止
    初詣 →徒歩圏内のご近所さんで。振る舞い酒もらってラッキー。
  • id:kobumari5296
    グラ娘。さん、BAおめでとうです!
    レベル高い……(私が低い)先輩たちについていくのがやっとです。
    いや、ついていけてさえいないかも(^_^.)
    次のかきつばた杯が楽しみです。いつだろ。
  • id:gm91
    開催中ですぜ
  • id:kobumari5296
    GM91さん、本当ですか?参加したい!どうやったら、開催中とかわかるんでしょうか……
  • id:grankoyama
    グラ娘。 2013/01/04 21:44:26
    開催中のはここ⇒http://q.hatena.ne.jp/1356961866
    まめにチェックするしかないが、注目の質問にだいたい挙がってる。あとは、質問一覧で『かきつばた』で検索したらでてくる。

  • id:grankoyama
    グラ娘。 2013/01/04 21:49:38
    さすがに正月進行。2作目を書き始めたのは1月3日の20:30でした。
    そっから二作も書いたんだから、推敲なんてできないし(まあ、時間があってもしないんですが)二作目なんて最後がぼろぼろです。
    酩酊まではいかずとも、それなりにアルコールが入ってたことも言い訳に……
    って、いい訳しなくていいんですよ! ひさしぶり(ほぼ二年ぶり)にまともにBA取れました。
    疑惑の採点(SF補正?)のおかげと思いつつも、今回はずば抜けた作品がなかったんだろうと。
    新人のコブマリさんの2作目を読んだ時点で、諦めてたんですけどね。

    今年も頑張っていきまっしょい!
  • id:kobumari5296
    グラ娘。さん、ありがとうございます!!
    そして、ありがとうございます先輩。いやいや、BAとれたのはグラ娘。先輩の実力ですよ。
    こんな小娘に対しても“さん”なんてつけないで、いいですよ!!
    グラ娘。さんの作品は、面白かったです。

    今年も頑張りましょう!
    では、小説書いてきま~す(笑)

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