二番煎じですが。
条件:巨乳持ちのメイドさんに朝起こしてもらうオリジナルの作品であること。
オリジナルでありさえすれば、形式、文体、ジャンルには特にこだわりません。
SFでもファンタジーでも恋愛物でもホラーでも携帯小説でもポエムでも萌えな感じでも、ご自由に。
ストレートなものでも変則的な物でも構いません。
要約すると『巨乳持ちのメイドさんに朝起こしてもらう』としか言いようのない作品であれば、それ以外の点は自由です。
字数:200~2000字程度
締め切り:2009-01-19 午前零時ぐらい
優秀賞:もっとも優秀な(と質問者が判断する)作品を書いて下さった方に200ポイントを進呈します。
<もどかしい>
「おはようございます。7時ですよ、御主人様」緩やかな心地よい振動が掛け布団を通じて身体に伝わり、夢の世界から現実へとゆっくりと掬い上げられる。今日もまた最高のスタートで始まった。「御身体の調子はいかがですか?」・・・起きたばかりで何とも言えないが、昨日の疲れはどうやら持ち越さずに済んでいるようだ。若干ぼやけた思考をゆっくりと現実に引き戻してくれる甘い匂いは彼女の付けている香水だろうか。次第に輪郭を帯びてくる意識と視界に強制的に飛び込んでくるのは・・・推定Gカップはあろうかという豊かな丸み。全体的にややタイトながらも袖口・襟・スカートには丁寧なフリルがあしらわれ、しかも先程から僕を釘付けにしてやまない暴力的なまでの膨らみとメイド服のコンビネーションときたら、ある種妖艶なまでの漆黒の蕾。そのデザインの中に閉じ込められた果実達はやや窮屈そうにその存在を主張している。まさに”希望通り”すぎる女性がこんなむさくるしい6畳一間のアパートに敷いた煎餅布団のそばで両膝を付いて静かに僕の目覚めと次なる言葉を待っている。21世紀にもなってこんなミスマッチも甚だしい状況があるのが不思議だが、これももう3ヶ月も続いてきたのだ。そう、三ヶ月も見続けてきたこの・・・巨乳。白いブラウスの下からほんのり透けて見える僅かな肌色との組み合わせの妙がまた。あぁ、いい・・・彼女は無意識に彼女へ伸びる僕の両手を優しく握り締めて微笑んだ。「温かいおしぼりですよ。これでお顔を拭いてくださいね?」
このサービスを知ったのはちょうど3ヶ月前。世間の不況やら何やらで仕事を奪われ、わずかな友人関係も失ってしまった。そんな絶望と失意の中で見つけた不思議な世界。顧客の要望に叶った容姿と性格で現れ、家事一切を行ってくれる最高のメイドサービス派遣会社。費用は収入から一定の割合で差っ引かれるので決して安くはないし、一日の利用時間も限られている。そして何といっても「御主人様とメイドの立場上、いかなる理由であっても自発的に”メイド”に接触してはならない」という契約書にあった一文が、僕を例えようの無いジレンマの鎖で縛り付ける。契約当時は余り気にしなかったが、実際に現れた彼女と何回も顔を合わせるうちにその意味がとてつもなく恐ろしいものだと気付く様になった。うあぁ・・・これじゃあ、生殺しだよぉ。
「・・・じゃ、行ってきます。」「いってらっしゃいませ、御主人様。」彼女の準備してくれた朝食を済ませ、僕はやっとこさ見つけたバイトへ向かう為、玄関のドアに手をかけるけど、そわそわして落ち着かないったらありゃしない。振り返れば彼女がにこやかにたたずんでいるし、一寸よろめけば魅惑の谷間に埋もれることも可能なのに。まだ寝ぼけているのかな?で、でも全てを失っても”あれ”だけは失いたくないっ!「あ、御主人様、襟元が・・・」何気に手をかける彼女から漂う甘い香りが再び僕を狂わせ、押し倒したくなる衝動。でも・・・だから・・・くぅーっ!
「い、いってきまーすっ!」そんな葛藤を振り切るようにやや乱暴に玄関のドアを開けて飛び出しっていった。こうして僕と彼女の朝は終わる。でも、帰ってくれば又逢える巨乳。おはようからお休みまで、僕の暮らしを見つめる巨乳。僕はその為に働く。知った奴にかわかるもんか、このもどかしさは。
朝、メイドが主人を起こしに来た。
主人は起きなかった。
するとメイドの胸が少し大きくなった。
メイドはもう一度、起きなさいと言ったが、主人は起きなかった。
するとメイドの胸がさらに大きくなった。
(中略)
主人はいくら起こしても起きなかった。
メイドの胸は部屋いっぱいに膨らんでいた。
メイドはもう一度、起きなさいと言ったが、主人は起きなかった。
するとメイドの胸が爆発し、家が吹き飛んだ。
地獄の坊っちゃん
「ごしゅじんさまーはやく起きないとまた遅刻してしまいまふよ」
今日も眼を覚ますとエツ子さん(自称永遠の十七歳)がお年頃男子の朝の生理事情もものともせず、俗にいう騎乗位(掛け布団越し)で起床を促していた。
彼女はその手に抱えていた巨乳をほおばる。ぐじゅりと熟しすぎた洋梨のような音をたてて鮮やかな血が真っ白な掛け布団の上にひろがっていく。
「行儀悪いなあ、もう」
「うぐうぐもぎゅぎゅ……ごひゅじんひゃまが……ごぐり……はやく起きないのが……悪いのでふよ。ただでさえ朝は忙しいっていうのに」
「はいはいいつもありがとう。感謝してますよ」
ぼくはゆったりと上半身を起こし、彼女の口の端からこぼれる朱を顎の先から舐め上げる。
するとエツ子さんはにへらと笑み、耳まで火照らせる。
彼女は巨乳をもうひとかじりすると今度はその瑞々しい肉をぼくの口腔へと流し込む。血肉の香ばしい味わいを触媒とし、互いの舌が絡み合う。口蓋から歯の裏、舌の付け根までをも犯され、背が粟立つような快楽に襲われる。たっぷり十分間蹂躙された後、ようやく開放された。
「うう……もうお婿にいけない」
「大丈夫れふよ。あたしが責任を持って貰ってあげますから」
「メイドのくせに生意気な」
「んー? なんらってー?」
意地の悪い笑みを浮かべながら腰を揺するエツ子さん。
「はうー!」
布団の中でぼくのエレクチオンが大ピンチっ!
そんなこんなで本日も遅刻決定なのでした。
今朝は目覚まし時計より先に起きた。
《だーっ、だめじゃないかそれじゃ!台無しだ全部台無しだ!》
僕は意識を失った。
目覚ましを止めたその手が僕を優しく揺すった。
「旦那様、朝ですよ」
僕は目を擦って起きる。家政婦のハツさんの笑顔は祖母に似ていると思……
《カット!カット!もう一度やり直し》
僕は意識を失った。
その白い腕は極限までたわめられ、解き放たれた虎拳が僕の睡魔を顎と共に刈り取っ……
《最初から!》
僕は意識を失った。
目覚めて最初に目に映るのはもちろん彼女の白い乳房で、僕はそれに手を伸ばし……
《すとーっぷ!何やってるんだ君は!》
あまりにも去りがたいシチュエーションだったので僕は歯を食いしばって意識を保った。
「ちょっとまって!なんなんですか?僕の朝を何度もやり直させて」
《気に入らないことがあっても、文句を言ったりしちゃいけませんか。そういうのですか貴方は》
「そうは言ってませんけど」
もう何度目なのかすらわからない繰り返しは止まったらしい。とりあえずは。僕は体を起こして周囲を確認する。いつもの僕の部屋だ。僕の家のメイドが半裸でベッドに腰掛けている。昨晩の彼女の痴態を思いだそうとし……昨晩?おどろいた、昨晩の記憶が無い。それ以前の記憶もだ。僕は寝ぼけているのか。
《ああ、目覚めてしまいましたね》
声、というか音の無い声のようなもののした方を見ると、これまた何と表現したものか、盲点を直接見れてしまったかのような感覚といおうか、見えないのに視野を歪めたような、そこに何かが、いた。
《これは重大な裏切り行為ですよ!》そいつはヒステリックに叫んだ。
「誰?」
《私が誰かは重要じゃないです。貴方の行為を問題にしてるだけです》
「知ってる人?」
間の抜けた質問だなと我ながら思うが、メイドは裸のまま肩をすくめて困ったような笑みを浮かべた。
《私が誰かは問題ではないんですよ!貴方がちゃんと朝、巨乳持ちのメイドに起こされてくれないから、こうやって恥を忍んで苦言を呈してるんじゃないですか》
「僕がどう起きようと関係ないでしょ」
《そんなことありません!貴方は巨乳メイドに起こされることができるのですから、それに伴う責任があるはずです》
「よくわからないな。貴方誰なんです?」
《誰だっていいって言ってるでしょ!ちゃんと巨乳メイドに起こされる気があるんですかないんですか》
「うーん、メイドにおこしてもらうのはやぶさかではないですが」
《あー!!!その態度、上から目線が気に入らない。慇懃無礼って言うんです。馬鹿にしてるでしょ!》
「馬鹿にしてませんって。ほんとに貴方誰なんです?」
《だーかーらー!私が誰かは問題じゃないって!どうせ私は巨乳メイドに起こしてなんてもらえませんよ。だから私に文句を言う資格が無いって言うんですね!あんたなんかだいっきらいだ!》
何もわからないままだが、こいつがなんだか気の毒に思えてきた。
「じゃあこうしましょう。貴方のリクエストを聞いて、寸分たがわずその通りに起きましょう」
《きーっ!そ、そそ、その態度が気に入らない!ああ気に入らないともさ!私がそこまで物欲しげに見えますか!私にだってプライドくらいある!貴方に何もして欲しいとは思いません!》
「じゃあなにもしません」
《ええ、いいですとも。何もしなくていいですよ!でも、その能力があるのにしないのはかっこ悪いなーとは思いますけどねっ》
「……どうして欲しいんですか」
《どうもして欲しくありませんったら!強いて、強いて貴方がすべきであることを私から言わせてもらえるならば、巨乳メイドに優しくおこしてもらって、貴方が目覚める。メイドが微笑む》
「やりましょう」
《ってのを100くらい細かくシチュエーションを変えて》
「えー」
《やるってあなた言いましたよね?いっといてやらないのはかっこ悪いなー、かっこ悪いったらないなー。まあ逃げ道くらい残してあげますけど》
「わかりましたよ。シチュエーション考える時間ください」
《ま、まあ、100シチュエーションを考えるのは楽しそうだから私もや、やろっかなー》
「じゃあ50くらい考えてください」
《やろっかなーって言っただけです!》
「いいじゃないですか。別個で100も考えたいですか?」
《しょ、しょうがないなぁ、半分だけですよ。》
そうして僕らはメイドも交えて100通りのシチュエーションのリストを作り上げた。
「できましたね」
《やりましたね。達成感っていうんですか、感じますね》
「そうですね」
《何事も1人でやろうとするから、責任が負えなくなってしまうのです。最初から協力を求めてくだされば》
「そういう話でしたっけ?」
《ま、ま、また終わった話を蒸し返そうっていうんですか!流石は詭弁の使い手だ!二度もその手は食わないぞ!あんた達はいつだってそうだ!》
「達って誰ですか?あー、いやいや、もうその話は終りにしましょう」
《ならいいです。じゃあはじめましょうか》
僕は目を閉じ羊を数え始めた。
大きな岩を叩く鈍い音が続く。
黄土色の煉瓦で作られた祭壇の上に、若い女と老いた男が居た。
「本当にこれで合ってるんでしょうね」
「古文書の通りだ。寸分の狂いもない」
男は細い棒で岩を叩きながら答えた。
「これ以上あんな奴に負けてられないんだからね。あの愚鈍で、ノロマで、ふとっちょの、淫らで、それで無節操なミルなんかに!」
悪意を隠そうともしない。それに対する男の、なにも実の妹にそこまで、とたしなめる声は弱々しかった。
「それはさておき」
一転して落ち着いた声で若い女が言う。
「で、いったい何なのこの服? ひらひらして変だし、ちょっと人には見せられないわね」
祭壇の上にいる若い女は、濃紺色のワンピースにフリルの付いた白いエプロン、同じくフリルの付いたカチューシャ、という装束だ。短い袖からのぞく痩せた褐色の二の腕がつややかに映え、その先にはきつく握られた小さな手のひら。小柄で痩せた俊敏さを伺わせる身体は、まだ肌寒い朝の空気の中でも薄く上気していた。
「その服は古文書にあったチガエシというものだ。ひらひらが何かをどうにかするらしいが、神聖な物だし、恥ずかしがることもなかろう」
まったくもう、などとぶつくさこぼしながら、女はふくらはぎをもぞもぞと擦り合わせるようにして落ち着かない様子だった。フリルで縁取られたスカートは膝から下の素足を良く目立たせている。悪くない。
岩を叩く音が速度を上げた。
「これで何もかもうまくいく。キコ、お前は太古の神のよりしろとして永遠に讃えられるだろう」
男はキコと呼ばれた女の胸部を凝視して、しかし、と小さく呟いたが、かぶりを振ってそれを飲み込んだ。叩く速度をさらに高める。
「お姉ちゃん!」
不意に祭壇を囲う針葉樹の間から一層若い女が駆けだしてきて叫ぶ。女はキコの衣装と同じものを身につけていた。壇上のキコに呼びかける。
「お姉ちゃん、ダメ! お役目はお姉ちゃんじゃダメなの!」
「ミル、あんたは…あんたは何もかもあたしから奪わなきゃ気が済まないの? シンも奪っておいて、お役目もあたしにはさせないつもりなの?!」
違う、誤解よ、とミルは叫ぶ。キコはそれを無視した。
弾ッ、とひときわ強く岩が叩かれ、音が止んだ。キコは岩に背を向けて両手を高くあげ、その上から垂らされている一本の太い飾り縄をつかむ。
「決してその縄を離すでないぞ」
「お姉ちゃん、ダメよ、シンが悲しむわ! 戻って!」
キコは何を今更と言わんばかりにミルを睨みつけた。
「違うの…お姉ちゃん」
ぬるり。
姉妹のやりとりを余所に、岩は外縁から茶色い粘液を出し始める。
「お姉ちゃん! お姉ちゃん!」
ミルは壇上のキコに駆け寄ろうとするが男がそれを押しとどめる。抑えつけながら男はミルのふくよかな胸部に目を向け、やはり、とか、うーむ、とか、いや大丈夫だ、とか、試し眇めつ首を傾げたりうなずいたりしていた。
その間にも岩は姿を変えていった。粘液をまとった細長い蔓草を幾本も延ばす。蔓草の一本でキコの首筋をなぞり、それがおとがいに達するとキコは小さく、ひぃ、と声を漏らした。異形から逃れようと、首を伸ばす。
「手を離すでないぞ!」
ミルをおさまえながら男が叫ぶ。キコの膝は震え、腰の支えを失いそうになりながらも、耐えるように縄をつかむ手に力を込める。するりと、胸元に一本の蔓草を潜り込こませた。衣装の奥で躍らせる。
「ひ…」
キコの両眉が寄り、奥歯を噛みしめながら唇が細かくふるえる。不意に、それまで蠢かせていた蔓草の動きを止めた。胸元に粘液の残渣を落として音もなく離れる。
「え…?」
他の数本もキコから離れ、不満を表すかのように岩に張り付く。
「やはり…足りなんだか…」
「何が!」
男はうなだれ、ミルを抑える手を力なく落とした。
「お姉ちゃん!」
自由になったミルは祭壇に駆けあがる。壇上への階段を一段上がるたびに、ミルの豊満な両胸があたかも重力から解き放たれたかのように、それはもう見事にゆっさゆっさと衣擦れの音を立てた。
ミルのそれを察知して、岩に張り付けていた蔓草をミルへと向けた。息を乱したミルが祭壇へと辿り着き、手の届く距離まで近づいた。滴る粘液を増し、ミルの身体を舐め取るように掻き抱いた。
「やはり、足りてなかった。しかしこれで揃った。キコでは貧しすぎたのだ。これで古代神様が復活される!」
あらん限りの腕を伸ばし、ミルの身体を這い尽くす。肌に触れた腕の数だけ力がよみがえるかのようだ。ああ、素晴らしい。腕の中にいるミルの息が荒さを増す。身体に神通力がみなぎった。
「なんなの、なんなのよ!」
ちょうど突き飛ばされた格好で横っちょにへたりこんでいたキコの声が響き渡る。
私は長き眠りより目覚めた。
S.Kは朝が来たことに気づく。かたかた、と階下の床が鳴る音が、カーニャがサラダをこしらえ、ミルクを温め、ボウルを並べていることを教えてくれている。
あの、すこしぼんやりしたところのあるカーニャは、この家が物音をよく響かせることにいまだに気づいていないらしい。彼女がひとしきり朝の仕事を済ませた後にS.Kの寝室にやってくるまでは、彼の寝室はまったく静まり返っているものだと思っているのだ。五日に一度はテーブルの縁にカップかトレイをぶつけては、欠けていないことを確認して安堵していることにも気づいていないと、全くもって疑っていない。
そして今日もカーニャはとす、とすと階段を鳴らしてS.Kのもとにやってきた。ドアの鍵は掛けていない。彼女は一礼をした後、枕元で静かにS.Kの寝顔を見つめた。
S.Kにとって、朝のこの瞬間こそが一日の中で最高の時間だ。
彼は知っている。今、彼女が老女から若い娘へ、つやつやとした幼い少女からしわだらけの年経た女へと目まぐるしく循環していることを。そして彼もまた、歳月の入り混じった混沌に投げ出されたことを。
エプロンの奥の、彼女の豊かな乳房の中には毒が詰まっている。母親となった女は幼い男児にそれを含ませようとするが、青年は老婆のそれを汚らわしいもののように振り払う。そして壮年のかさついた手で膨らみきったばかりの乳房をもぎ取るかのように掴む。そのような情景が、時の流れの見えない寝室でしばらくぐるぐると繰り返され、そののち、S.Kとカーニャの中間に浮いたあと、すとん、と何かが落ちる音がして、それでやっとS.Kはまぶたを開き、体を起こした。
今日のカーニャはふっくらとした中年女だった。S.Kの肩にふわりとガウンを落とし、スリッパを足元に揃えて、
「おはようございます。良い朝を迎えれられましたか。」
と、S.Kに語りかける。S.Kは首を軽く縦に振りながら、ベッドから足を下ろした。
「カーニャ、ニースにもたまには私を起こしに来てもらいたいと伝えてくれないか。」
「ミルクもパンも、冷えてしまいますよ。」
と、カーニャは微笑んだ。それは女の笑みのようにも、母の笑みのようにも、得体の知れない他人の笑みのようにも見えた。
《お目覚めなさいませ、ご主人様》
豊かな乳房を有する女官が耳元で囁く。
──ここは、寒い。
呟き返し、寝返りひとつ。
《もうすぐ、氷も融けましょう。
お目覚めの時にございます》
無数の手が頬を撫でる。
《星辰も善うございます。
今日こそはわたくしに胤をお授け下さいませ。
胎の内で千の仔が待ち兼ねております》
だが──
タイトル『マリア』(だいたい1500字ぐらい)
わずらわしい男が残した財産はひとりで抱えるにはあまりに多かった。
預貯金に有価証券。高層マンションが一棟に、古びた洋館。
世界でもっとも幸福な人間のような気もしたが、どこかむなしい。
なにしろまだ高校生。天涯孤独の身の上は、やはり寂しさがつのる。
ツタのからまった洋館には年老いた執事の中村さんが住み込んでいるが、空き部屋は両手でも数え切れずに、足の指まで使ったが、それでも足りなかった。
館内は汚れが目立ち、薄ら寒い風が吹き抜けて行くのは、二人して滅入る以外なかった。
そこで若い女中(メイド)を募集することにした。
姉のような、母のような存在を求めたのかもしれない。中村さんにしてみれば娘だろうか。
――お手伝いさん募集中――
求人の反応はよくなかったが、応募はあった。給金は少なく書いたし、若い方歓迎と無駄に強調したのが理由だろう。お化け屋敷などと揶揄される家が募集しているのも影響しているかもしれない。
「鈴木マリアです。よろしくお願いします」
採用したのは細身で背の高い、豊かな胸をもったマリアさんだった。黒縁の眼鏡は少し陰険な雰囲気があったが、とても誠実そうなのが決め手だった。もちろん大きな胸と不似合いなベリーショートの髪型も後を押した。
仕事は実に丁寧で薄暗い廊下も気にならないらしい。クロイ生物が這い出しても動じない。
「マリアさん、明日からは住み込みでお願いできるかな?」
マリアは「かしこまりました」と素っ気なく答えた。それもまた好印象だった。
「それと、学校があるので、朝はちゃんと起こしてくださいね」
目覚まし時計の金切り声よりも、人の温もりで目覚めたいではないか。
マリアは腕時計と柱時計の交互に見て「では、6時半にお部屋にうかがいます」と会釈した。
朝が待ち遠しかった。コチコチとなる時計の振り子の音が大きく聞こえた。
すっかりと興奮したのか、寝入ったのは朝方だったのかもしれない。
ベッドが沈み込み、身体をゆすられるまで、夢の中だった。
その夢が誘ったのだ。
「おきてください。もう、朝ですよ。おきてください」
献身的に尽くしてくれるマリアとベッドの中で肉体を重ね合わせる夢が悪いのだ。
「キャー!」
夢心地のままマリアを抱きしめて、まさぐって――そして悲鳴をあげてしまった。
「……お、お嬢様……。申し訳ありませんでした」
飛び出たマリアは乱れた衣服を正すことなく、その場で膝を突いて謝罪した。
K子は混乱の最中にいた。
金持ちであってもK子はただの純朴な女子高生。信じられないモノを掴んでしまっては言葉も失う。
「そ……その、お手伝いさん募集としか書いておりませんでしたので、つい……」
大きな胸はニセモノだったのだ。
泣き出したいのを我慢して、マリアに退席を願った後、押し付けてしまった自らの小さな胸をそっと抱いた。
憤慨か後悔か。だまされたのは間違いないが、マリアを憎む気持ちは沸いてこない。
「ひどい人だなぁ……」
わずらわしい男は、はじめてではない。
「なんで……かな……もー」
K子は急いで服を着た。
館内に彼の姿はない。
「なにやら泣いておりましたな。可愛らしい顔が台無しだとは言ったのですが、どーにも……」
中村さんは話が長い。
「それは?」
手にしていたのは彼に貸し出したメイド服のようだ。
「これですが、マリアさんが「お返しします」と、なんだか、あせって……お、お嬢さま?」
K子は走り出していた。いつもなら紅茶の香りをかがないと何もないところでも転んでいるというのに、鈴木マリアの背中を探しに出たのだ。
「もー、なにやってんのヨ」
彼に向けてか、自分に向けてかは分からなかった。
了
あっ……巨乳じゃない。
胸へのこだわりが欠けててスミマセン。
あ……メイドさんでも、ない……ごめんなさい。
「すいません。おっぱいは、出ないんです……」
朝食の時、俺の世界が崩壊した。
メイドの巨乳は朝のミルクの為にあると信じて疑わなかった俺にとって、あるいはメイドの巨乳はリアルおっぱいマウスパッドが出来ると信じて疑わなかった俺にとって、あるいはメイドの巨乳はうずめて眠るための枕だと信じて疑わなかった俺にとって、ミルク生成機にもマウスパッドにも枕にもない巨乳が存在する、いやたとえ自分の言う事を聞くメイドを使ったとしても、この世の全ての巨乳はそういう類のものではないと知った時の絶望は、およそ他人には分かってもらえないであろう。
それは夢だった。
母を早くに亡くし、その上、父は飲む・打つ・買うの三拍子揃ったいまどき珍しい位の駄目人間だった。お約束のように俺に暴力まで振るってきた。俺はそこから這い上がり、成り上がると決めた。高い地位について羽振りのよい生活を送る時、側には巨乳メイドを、と決めてたのだ。メイドというものには、ご主人様に付き従う巨乳メイド(しかもミルクまで出る)、というものを漫画で擦り切れるぐらい見て、それ以来憧れていた。巨乳メイドを雇い、その巨乳を、ミルクを好き勝手に扱うことに。それが、俺の長年の夢だったのだ。
それなのに、それなのに現実は巨乳からミルクを無条件に出せないらしい。あの巨乳は基本的にはただの脂肪だというのだ。ミルクが貯蔵されているわけではないと言うのだ!
なんということだ。俺は途方にくれた。おっぱいミルクの為に、長い間艱難辛苦を耐えに耐え、その辺の女などには目もくれずにやってきて、とうとう今の地位についた。家もメイドの為に洋館にした。だのに、世界はこんな仕打ちを俺に与えてくる。今までは、そんなもの遭遇しても、立ち上がることは出来た。
おっぱい。
全てはメイドの癒しの巨乳を道の先に妄想し、それに向かって行く事で、立ち上がっていた。しかし、今目の前には闇しかない。そこには巨乳は無い。ミルクも無い。全ては、終わった。
愕然とし、力なくベッドに倒れこむ。もう、このまま寝よう。きっとこれは夢だったんだ。いや、今までが夢だったんだ。起きたら、きっと巨乳からミルクがあふれんばかりにほとばしる世界になっているんだ。
分かっている。
そんなことはないなんて分かっている。だが、もういい。いいんだ。いいんだ……。
俺は絶望の眠りに落ちていく。このまま眠り続けても良いか。どうせ巨乳メイドの乳が夢なら、いっそ夢の住人になってしまえば……。
そこで、体がゆすられた。
「ちょ、ちょっとご主人様、お気を確かに!」
ああ、この声は俺の雇った巨乳メイドだ。ミルクはでないと言ったメイドでもある。だが、彼女に非は無い。巨乳ならミルクがでると思って調べていなかった俺が悪い。だから。
ああ、もうやめてくれ。もう、いいんだ。この世なんて、全て、どうでも。
ぴちゃ。頬が何かで濡れるのを感じる。それが、口に入ってくる。
これは。ミル、ク?
俺は目を覚ました。起き上がって見ると、巨乳メイドが胸をはだけ、そこに朝食用に持ってきたのであろう牛乳を、胸につけ、それを俺の口に流しこもうとしていたのだ。
「……お前、何をやっている」
「ご主人様のご要望に答えたいと思ったんです。ちょっと変態っぽい行為ですけど……、駄目ですか?」
途端に俺の頭は冷えた。そうか、その手があったか。なにも生乳にこだわる必要は無い。確かに、生物学的にはミルクは出ないかもしれない。だが、こうやって工夫すれば、近い事は出来るじゃないか。
生きる道が見えた気がした。俺はベッドから立ち上がると巨乳メイドの手をとり、言った
「ありがとう。君のおかげで、また生きていける」
「そ、そうですか」
「それともう一つ」
「はい」
「おはよう」
私の体から生えた巨乳を持ちあげながらメイドはつぶやいた。
「三つだ、三つはっきりさせておこう。ひとつ、おれはメイドじゃない、ふたつ、おれは男だ、みっつ……おれは……この途方もないデカパイの消し方を知っている」
ハンス・ヘンリクセンが巨大な乳に関する呪術の研究をはじめたのは、やっとの思いで入ったばかりの大学をある事情で(これはあとで語ることになる)除籍になってから、叔父のコネで転がり込んだ会社でまたもや不祥事を起こし(これは女にまつわる類のよくある事故だから特には語らない、キーワードは「会議室」と「コンドーム」そして「専務」)、史料編纂室勤務になってすぐのことだった。
妙に湿気た昼休み、ハンスは上司のエドから一冊の本を預かった。エドはこの国が南北に分かれてくっつくその前から資料室にいたみたいな顔の、しなびたドーナツを思わせる顔の老人だ。話す言葉は「そうだ」と「いいや」、たまに「なぜ?」
そのエドが、乾ききった皮がひきつれて裂けるんじゃないか、というくらいの笑みを浮かべてハンスにその本を渡してきたとき、ハンスは子供のころに田舎の川で見知らぬ旅人に襲われかけたときのことを思い出した。旅人はテンガロンハットをかぶった無精ヒゲの色男で、ハリソンフォードをやせさせたみたいな顔で、にっこりと笑い、おれのズボンのボタンをはずしながら言った。
「ぼうや、新しい世界を見せてあげよう」
おれは地面に押し倒されたとき、手近な石ころをつかんで旅人の頭を殴りつけ、走って逃げた。石がこめかみに当たったとき、めりこむような感触があった。藪を抜け、切り傷をいっぱい作って帰ったおれを、母親は優しく抱きとめてくれた。それから数週間は、いつ朝食の席で親父が「ほう、テンプル川でカウボーイが殺されたらしいぞ」と言い出すかと心配したが、そのうち誰も死んではいないのだと思い込むことにして、おれはそのことを忘れた。
エドの笑みは、そのことをおれに思い出させた。あの川原で殴った旅人は、エドだったのか。だがもちろんそんなはずはなく、エドは本の表紙をトントンと折った針金みたいな指で叩いた。
「巨大な乳の美しいメイドを手に入れる呪術」と、表紙には書いてあった。戸惑うおれに本を突き出し渡すと、エドは振り向いて手を振り、部屋から出て行こうとした。おれは言った。
「やめるのか、エド」
「そうだ」
「これ、餞別かい」
「そうだ」
「らしくないな」
「なぜ?」
「あなたは真面目で、勤勉で、それに無神論者だ」
「そうだ」
「だから、こんなふざけた本を読むなんて、思ってなかった」
「なぜ?」
「だって、呪術だぜ? 巨大な乳の美しいメイドを手に入れるなんて……インチキだろ?」
それからたっぷり三秒、エドは背中を向けたまま満足そうに息を吐いて言った。
「いいや」
そしてエドは部屋を出て、そして二度と帰ってこなかった。
はじめは半信半疑に、やがて真剣に、ハンスはその本を読み始めた。ふざけた題名とは裏腹に、真剣な文体でかかれたその本は、集中力に欠けがちなハンスをとりこにした。やがて、本を読み終わったハンスは、エドの家をたずねた。最後の検証をするためだ。
ノック、ベル、しばらくしてパタパタと軽い足音。
「どちらさまですか」
ドアの向こうから、おずおずと、舌足らずな声がする。
「ハンスです、エド、エドワードさんの部下の」
ドアが少しだけ開き、そこに黒髪の美少女が現れた。身長は子供のようだが、その胸は白と黒のメイド服をぱんぱんに張り詰めさせている。小さくとがった鼻、小さな口、大きくとろんとした瞳。美少女は、髪の毛を後ろでひっつめにして、ハンスを見上げている。
「すみません、ごしゅじんさまは、ふざいでございます」
「そうですか、残念です、また伺います」と答えたハンスの顔は、ちっとも残念そうではなかった。
この本は本物だ。ハンスは本に書いてある材料と道具を集めはじめた。多少入手の難しいものもあったが、大学時代、理系の学生たちと一緒にやったいたずらで、講堂を爆破し、全壊させたときに比べたら安いものだった。もちろんあのときは爆破も全壊も計画には入っていなかったから、今回もそのようなことが起こるとハンスが予想できるわけもなかった。
全ての条件をクリアし、毎朝メイドに起こしてもらう楽しい日々が送れるはずだったハンスは、鏡の前に立つ全裸の自分を見て言った。
「いったいどうなってんだ?」
「それで、いま私の目の前にいる金髪で長身、巨乳の美しいメイドが、ミスターハンス・ヘンリクセンってわけ?」
私はメイド--いまはハンス--の手から巨乳を取り戻すと、両腕でかかえた。
「ああ、お前が手に入れたあの本は、おれが怒り狂って古本屋に二束三文で叩き売ったものだ。あのあとおれはエドの家に行き、なぜ失敗したのかを突き止めようとしたんだが……あれは失敗じゃなかった、あのエドの爺さんは、掛け値なしの本物の変態だったのさ。おれは聞いた、エドはどこだ、いません、あの本はデタラメだ、いいや、お前、もしかしてエドか、そうだ、大変だ元に戻らなきゃ……なぜ?」
「それで?どうすれば元に戻る?」
「乳を持つんだ、同じ目にあったメイド野郎の乳を持つ、そして眠るのを待ち、朝までふんばる、倒れず朝が来たら、この野郎をそっと起こすんだ。これを三日三晩続ける、すると呪いが解けて、おれたちは男に戻るんだ!」
「はぁん、私はつまり、巨乳持ちのメイドさんに朝起こしてもらうんだな」
「そのとおり!さあ、乳を持たせろ、その巨大でやわらかい……おい、何をする」
私は乳の間に隠しておいたデリンジャーを抜き、ハンスの額に狙いを定めた。
「なあぼうや、新しい世界を見たくないか?」
こめかみの傷は癒えないが、やわらかなブルネットが隠してくれた。
私は引き金に力をこめて、十数年ぶりに再会した少年のおびえる顔を見ながら、心の中で射精した。
「坊ちゃま、朝でございます」
「ん」
メイドの安寺の声に従って、パチリと目を開けては見たのだが。実は彼女が廊下を歩いてくる足音で俺は既に覚醒していたりする。寝たふりをしたのは当然、彼女に起こしてもらうと言う特権を手放す気になれなかったからだ。
「お早うございます。お坊ちゃま」
「お早う」
安寺の白い手が、俺の上半身に被さる上掛けを取り払う。その間に俺は、まぶたの裏に合わせていた焦点を彼女に向けて調整することに努めた。俺の体に、少しだけ覆いかぶさるようになった彼女の輪郭が、だんだんとはっきりしたものになってくる。主に、今目の前に広がる、黒のブラウスに包まれた胸の膨らみが。
「…坊ちゃま?」
不審げな声に、なんでもないと告げて慌てて目をそらす。毎朝のことなので感づかれてはいるだろうが。次に目を合わせたときの安寺は、笑顔だった。
「朝食の準備が整っております。支度が出来ましたらお越しください」
「判った。…安寺は?もう食べたのか」
「はい。…坊ちゃま、失礼ですが体のお加減が悪いことはありませんか?」
顔が赤いです、と安寺は続けた。俺はもう一度、なんでもないと告げて首を振り、彼女に退出するよう命令した。
もちろん言えるわけが無い。ついさっきまで、安寺と抱き合う夢を見ていた、などとは。
リムジンが学校に乗りつけるのは大体いつも予鈴の鳴る5分前なので、俺が教室に入る頃にはほとんどの級友がすでに揃っている。普通高校に高級車で送迎されてくる俺に対し、周囲の視線は当初危惧していたほど冷たいものではなかった。仲の良い奴も馬の合わない奴も適度に居合わせ、人間関係はそこそこに円満、割と充実した学生生活を送らせてもらっている。
ただ、一つだけ悩みの種があって。
それは予鈴と共に、滑り込みダッシュで教室に飛び込んでくる影であり、
「セ、セーフ!」
「アウトだ。3日連続アウト。安寺、チェンジ」
「誰とですか!?」
担任の無慈悲な通告に悲痛な声を上げる、クラスメートである。名前は、安寺亜紀といった。
もちろん安寺亜紀は、うちの屋敷に仕えるメイドの安寺だ。彼女がいつも遅刻ギリギリで登校してくるのは当然、自分の仕事を片付けてから屋敷を出るからで、それなのに車で登校すると自分との時間差が5分ほどしかないのは、常々不思議に思っているのだが。
「なあ」
昼休みに、俺は安寺に声を掛けた。屋敷で見るのとはまるで雰囲気の違う少女の顔が、こちらを向く。
「なあに?正義」
正義と言うのは俺の名前だ。学校では坊ちゃまと呼ばないよう、彼女にはお願いしていた。正直あまり聞き慣れていない呼び方をされ、俺の動悸が少し早まる。軽く咳払いをしてから、周りを伺うように声を潜めた。
「朝、大変だろ。なんなら、一緒に車に同乗して学校来ればいいんじゃないか」
「何度も言ってるでしょ。それは駄目なの」
俺の親父は子煩悩だが、使用人との距離については厳しい。安寺に俺の世話をさせることは認めても、俺の庇護で彼女に楽をさせないよう、あいつは厳命していた。
「どっちかっていうと、さ」
「何」
「正義の朝の支度。あれを他の人の仕事に割り振ってくれたら、あたしも10分早く出られるんだけど」
「それは…」
安寺が、朝起こしに来なくなる、と言うことだ。彼女の朝に余裕を与え、俺の見栄を保つ。二つ返事で頷けばそれは叶えられるのに、つい言葉に詰まる俺がいる。
「駄目、か。あんた朝弱いもんね」
どこか婉然とした笑みを浮かべる安寺の顔から視線をそらす。そらしたら今度は胸のふくらみにぶつかって、また明後日の方に向きを変える。次にぶつかったのは、いつの間にか横に立っていた男子生徒だった。
「あ、確雄君」
「須賀…」
須賀確雄。隣のクラスの同級生だ。体格のいい長身の上に乗っかった角刈りが、剣呑な眼差しで俺と安寺の二人を見ている。
「なあ、山崎」
俺の苗字を呼ぶ声には、どことなく敵意が混ざっていた。
「亜紀、借りていいか」
「…ああ」
俺が目を伏せて頷くなり、確雄は亜紀の腕をつかんだ。
「ちょ、ちょっと、確雄君!?」
「聞きたいことがある。来てくれ」
非難の声を上げる安寺を引っ張りながら、確雄は教室から出て行く。一瞬、安寺と目があった気がしたが、俺には彼女に掛ける言葉が無い。
安寺と確雄は、付き合っていた。
「坊ちゃま、朝でございます」
「…ん」
翌朝、俺は安寺の声でパチリと目を開ける。いつも通りに。
昨日、あれから学校で彼女と会話する機会は無かった。下校すれば、何故か安寺は俺より先に屋敷に戻って自分の仕事に手を付けているので、また話しかける暇が無い。あの後、確雄とどんなことを話していたのか、聞き出すタイミングは無かった。
彼女は一日のほとんどを、我が山崎家に奉仕するために消費しているはずだ。それでもどうにかして時間を作って、確雄とは会っているらしい。昨日の夜も、もしかしたら。
彼女の朝は、いつも俺と共にある。安寺に朝起こしてもらうのは、俺の特権だ。だけど、今、上掛けを取るために前かがみになった、この目の前に広がる豊かな膨らみに触れる男は、俺ではない。俺のほかにいるのだ。
安寺の腕が上掛けを取り上げ、俺のそばから離れる。いつも通りに。
「お早うござ…いっ!?」
今日はいつもと違う。俺の腕が安寺の手を取り、引き寄せたからだ。バランスを崩して倒れた彼女の大きな胸が、俺の胸にのしかかる。毎朝、毎日、目にして、想像した安寺の肉体。重くはなかった。
「坊ちゃま!?」
安寺が身を起こして体を離そうとする。俺は彼女の背中に手を廻し、逃がすまいとした。狼狽した少女の腕が無意味に振り回され、俺の腕や背中を叩く。逆に保護欲を覚えるほど、か弱い力で。俺は完全に体を起こし、暴力的な感情と一緒に安寺の体を完全にベッドに抑えつける。気がつけばいつの間にか、彼女は抵抗をやめていた。荒い息のまま、濡れた瞳でこちらを見つめる安寺の顔を見て、俺の理性は飛んだ。
「…亜紀」
安寺の体にむしゃぶりつく。すぐ目の前に白いうなじがある。鼻先が彼女の髪に触れて、俺の脳をくすぐる。俺の腕が強く彼女を抱きしめようとして、
「…正義」
その一言で、弛緩した。
俺の腕が緩んだのを感じ、安寺は俺の体から離れる。一瞬だけ浮かべた表情の意味を俺は掴むことが出来なかった。
何も言えないでいる俺を、なじるでもなく、拒絶するでもなく。乱れた着衣を整えながら、彼女はいつもの笑顔に戻る。
「坊ちゃま」
「…」
「朝食の用意が整っております。支度が出来ましたら、お越しください」
「…」
俺の返事を待たず、安寺は部屋を出る。
恐らく今日のことを、安寺は誰にも言わないだろう。
彼女の目覚めの声と共に、俺の一日は始まるのだ。いつも通りに。
文字数大きくオーバーです。時間オーバーです。まとまってません。オチもつくれませんでした。でもメイドさんは好きなので許してください。おっぱいも好きです。
コメント(2件)
ご応募、ありがとうございました。
結果は明日に!
10 id:screammachineさんに
特別賞として100ポイント
11 id:nakoyanaglw
6 id:azumltel
8 id:tokoros
9 id:hanhans
5 id:tamasima
を進呈いたしました。
講評は、下記URLにて。
http://d.hatena.ne.jp/nayusawamura/20090120/1232481366
皆様、ご応募ありがとうこざいました。