小説部門 - 400字程度。「萌理学園」が舞台です。最優秀作品には200pt進呈。
今回のテーマは「夏休み」「遊園地」「祭り」「花火」(複数選択可)です。
原作部門 - 200字程度。「萌理学園」の設定です。最優秀作品には100pt進呈。
人物・組織・場所・異能などの設定を募集します。
イラスト部門 - 「萌理学園」の設定です。最優秀作品には200pt以上進呈。
今回のテーマは「夏休み」「遊園地」「祭り」「花火」(複数選択可)です。
最大600×600(ドット絵は16×16以上、顔アイコンは100×100)の画像サイズ、
JPG・GIF・PNGいずれかの画像形式で、画像を貼るかリンクしてください。
投稿作は、「萌理Wiki」他、萌理賞関連サイトへの転載をご了承ください。
なお「萌理学園」の設定に基づく二次創作は、誰でも自由に制作可能です。
『瞳』
仕事上がりに屋上から見る街は、やっぱり格別だ。
夜空に紫煙を吹きかけながら、しみじみ思う。
ただ、傍らでしゃがみ込んだままの少女は、ずっと別のものに夢中で。
「線香花火、そんなに面白いかー」
少女は答えない。
この集中力が勉強でも続けばいいんだけどな。
つ、と再び差し出される手。
「もう一本」
ひょろっとした導火線をつまんで渡す。
それでも不満そうな顔をするので、ライターの火も貸してあげた。
小さくはぜる音。
橙の光が少女の青白い肌を照らす。
華やかに咲き、儚く散る短い花の一生。
少女の瞳は真剣だ。
腕時計を見遣る。
ほんの軽い気持ちのつもりだったのに。
「おい、天沢。そろそろ帰らないと……」
「もう一本」
いつの間にかこちらに向けられた眼差し。
いつも一人で補習を受ける女子生徒の、
自分の教科以外全て高得点の成績表を思い出す。
近付いてくる大きな瞳。
一途で純粋で、傷つきやすい瞳。
守りたいのか壊したいのかも分からずに触れたとき、
少女の手の火の玉が一際強く輝き、
ぽとりと落ちた。
原作部門
萌理学園入学案内パンフレット・歴史入門編
北に草木深き盾山(たてやま)、東に名水辰止川(たつやみがわ)が流れる土地豊かなるな日月(じつげつ)平野。
この平野を見守るかのように盾山に抱かれつつ建つ学園、それが萌理学園です。
歴史は古く、江戸時代初期の一国一城令で放棄された城を利用した藩校がその発祥です。学園を取り囲む濠はその名残です。
詳しくは学園図書館(本館2F東)へどうぞ。親切な図書委員が懇切丁寧に哭くまで対応いたします。(記・図書委員会)
タイトルを含めると200文字を超える悲しさ。悩ましいです。
投稿ありがとうございます。歴史の設定。これがひぐらしのTIPSみたいに何かの事件に関係していくと面白そうです。
「下から見るか?横から見るか?」
先輩は可愛い声して横暴な人だ。
「花火見物に行くぞ」
「いいですね。先輩の浴衣姿、楽しみです」
「お前を楽しませるつもりはない」
「残念です。じゃあ普通の服で」
「お前は着てこい。浴衣は夏の戦闘服だ」
待ち合わせ場所に着くと、先輩が見あたらない。
ばしゃーん。
「ひゃあ!」
バケツと先輩が転がっている。
「急いだら転んだ」
「なんで水が」
「花火用」
「今日は打ち上げ花火だから要らなくないですか」
「うるさい」
歩き出す。先輩の袂をそっとつまむ。振り払われずにそのまま。
温い風が火照る頬を撫でていく。
「……すまん」
「すぐ乾きます」
横を向くといつのまにか先輩はポッキーをくわえている。
「ふえ」
食え、と言いたいらしい。
まったく今度は何を、と思って顔を近づけた刹那、ポッキーが火花を吹いた。
間一髪で飛び退きながら、無茶をして先輩が火傷しないとよいがと思った。
随所にそれを隠し持つ花火部の夏が、もうすぐ終わろうとしていた。
投稿ありがとうございます。もはや先輩物は萌理賞の一つの定番といえるでしょう。「ふえ」という姿が可愛らしいですね。ポッキーの甘い罠。
『瞳』
仕事上がりに屋上から見る街は、やっぱり格別だ。
夜空に紫煙を吹きかけながら、しみじみ思う。
ただ、傍らでしゃがみ込んだままの少女は、ずっと別のものに夢中で。
「線香花火、そんなに面白いかー」
少女は答えない。
この集中力が勉強でも続けばいいんだけどな。
つ、と再び差し出される手。
「もう一本」
ひょろっとした導火線をつまんで渡す。
それでも不満そうな顔をするので、ライターの火も貸してあげた。
小さくはぜる音。
橙の光が少女の青白い肌を照らす。
華やかに咲き、儚く散る短い花の一生。
少女の瞳は真剣だ。
腕時計を見遣る。
ほんの軽い気持ちのつもりだったのに。
「おい、天沢。そろそろ帰らないと……」
「もう一本」
いつの間にかこちらに向けられた眼差し。
いつも一人で補習を受ける女子生徒の、
自分の教科以外全て高得点の成績表を思い出す。
近付いてくる大きな瞳。
一途で純粋で、傷つきやすい瞳。
守りたいのか壊したいのかも分からずに触れたとき、
少女の手の火の玉が一際強く輝き、
ぽとりと落ちた。
投稿ありがとうございます。夏の花火の儚さ。
Moeri International Academic Network
萌理学園は国内外を問わず多数の姉妹校を持つ。その数はアジア・欧米を中心に100を超え、萌理未踏の地である南極大陸への進出も計画されている。各校は交換留学生等の交流も盛んであり、そのような、人・物・情報のやりとりを総称してモエリ・インターナショナル・アカデミック・ネットワーク(略称:MIAN、ミアン)と呼ばれている。ちなみに各校の校章には創立番号を意匠としてあしらうことが定められている。
以上、原作部門でお願いします。
投稿ありがとうございます。姉妹校というのはいいですね。姉妹というのが萌えっぽい。南極大陸とかペンギンの着ぐるみを着ているイメージが何となく浮かびます。
イラスト部門に投稿します。テーマは「夏休み」と「祭り」で、タイトルは「ありえなくね?」です。
http://f.hatena.ne.jp/nanakaeru/20070901162052
よろしくお願いします。
投稿ありがとうございます。ゴスロリ浴衣もいいですね。
小説部門に投稿です。
萌理学園の夏休みにはオプションがつく。
圧縮・断片化・擬人化などがあり、個々人で選択できるのだ。
口下手なわたしは迷わず断片化を選んだ。
読書家で、背中で語る氷川。彼との架空の旅行を夢想すると、"未来進行形わたし"の愛しいという感情の断片が集まってくる。三日間氷川の写真を眺め涎を垂れ流し続け、皿に盛られた彼を前に一週間"待て"を言い渡されたような煩悶の後、恋心をつまらない理性や常識で縛り付けているのが滑稽だと思えるほどのリビドーが湧き上がってきた。
そして、わたしは夏期休暇初日未明に氷川宅へ侵入し、うつ伏せのまま苦しむ彼に告白した。
「好きじゃ、氷川!」
氷川は苦悶の表情のまま首だけをわたしに向けた。
その瞳の中に、無数のわたしが見えた。圧縮化された夏休みを選んだ彼は、連日告白に訪れるわたしに苦しんでいるのだ。
「負けてなるものか」
わたしは彼の背中に踊りかかり、寡黙な大地を舐め始める。
氷川の歓喜の声は断片化できないほど小さなものだった。
投稿ありがとうございます。奇妙で面白い設定ですね。
終わる夏
「もう終わっちゃうね」
線香花火を見つめながら彼女が呟く。終わってしまうのは花火だけだろうか。僕は彼女の横顔を眺める。黒目がちな瞳が花火の色に染まっている。
「来週だっけ、引越し」
僕の問いに彼女は小さく「うん」と頷く。
もう何度も確認したことだった。なぜこの時期なのかと彼女を責めさえした。でも彼女は申し訳無さそうな顔で「ごめんね」と言うだけだった。
「うふふ」
突然彼女が笑い声をあげた。
「どうしたの」
そう尋ねる僕の顔を指差して彼女が言った。
「鼻毛、出てるよ」
そして今度は「あははっ」と笑い転げたのである。それは久しぶりに見る彼女の笑顔だった。
この鼻毛は彼女のために伸ばしたものだった。僕の鼻毛が肩まで伸びて彼女と同じになったら「結婚しよう」と言うつもりだったのだ。
彼女の鼻毛が夏の夜風に揺れる。ふたりの夏が終わる。
投稿ありがとうございます。エエエエエ~意外な展開。「肩まで伸びて彼女と同じ」が微妙にフォークソングっぽいですね。
今回もテーマが夏休みということで、前回(http://q.hatena.ne.jp/1185028990#a742036)の延長戦です。
ひとりだけ、第十二・五回萌理賞、みたいな。
『円環面』
花火部が発射したロケット花火の残骸が、皸を纏い校舎に埋まっている。
僕は、教室の後ろ、窓から月光が差し込む場所に、背負ってきたリュックと彼女の四分の一身を下ろし座り込んだ。
人気の無い深夜の学校。
明日からはこの教室も萌理学園の生徒で埋まるのだろう。
僕らは、ただじっと寄り添い、空気が動くと命が消えてしまう灯火のように佇んでいた。
厳かに、夏が口を開いた。
「来年逢う時は、三年生だね」
「……うん。夏って、消えてる時はどんな気分なの?」
「死んでるのと、同じ。だから、今年目覚めて、去年と同じように君が居てくれた時は、嬉しかったよ」
そして目を伏せて、
「みんなが歩いてる人生を、私は点線で歩いてるの。だから、交わっても、一瞬」
眉毛の端をそっと下げた。
「夏、いいこと教えてあげる」
彼女を抱く手にぐっと力を込める。
「僕らの人生は、大きな曲線なんだ。離れずに、ずっと廻ってる」
啜り泣きを抑えようとする声が、震えた。
「だから、また還ってくる。その時には、そばにいるよ」
「うん」
時計の針が0時を廻った。
僕の腕の中から、ふっと重みが消えた。
投稿ありがとうございます。続編物!
ごめんなさい2つ書いたのですが決めきれなかったので両方投稿しちゃいます。
『終わらない夏休み』
僕はいじめを受けている。
原因は全く分からなかった。気付けばクラス全員に無視されていた。
彼女だけは違った。
トイレで一人泣いている僕の前に彼女は突然現れた。
「おい」
「!!」
「初めから泣いてるんじゃ怖がらせ甲斐がないだろ」
「ゆ、幽霊?」
「ああ。お前を呪ってやる」
「はは、幻覚じゃないよね」
何故だかあまり恐怖は感じなかった。
「聞いてるのか!?呪って」
「トイレの花子さん?でもここ男子トイレ…」
「え…?あ…ぃゃ…ち、違っ」
どこか人間っぽかったからかも。見た目もちょっと可愛かった。
「…よ、用を足してたわけじゃないんだからいいだろ!」
「そういう問題じゃ」
「う、うるさい!」
それから毎日トイレで会うようになった。
間もなく夏休みに入った。
気が付くと憂鬱だったはずの学校のことばかり考えていた。
僕は彼女に会いに行った。
「あのさ、お前に言わなきゃいけないことが」
「僕も」
「え?」
躊躇はしない。
「君が好きだ」
「!!」
沈黙。
期待してたわけじゃない。
「…ふ、ふーん。死んだら一緒になれるけど?」
「じゃあ死ぬよ」
「い、いや、えーと、ごめん」
あれ。
「お前、もう死んでるんだ」
(終)
『夏休みのHR』
「じゃ、お願い」
「きりーつ!気をつけ!れい!」
「おはようございます!」
「やっぱり照れるわね」
木々の緑をすり抜けカーテンを揺らした風は、懐かしい匂いを漂わせ僕たちの鼻もとを擽った。
目を閉じて蝉の声に耳を傾けるとセピア色の記憶が彩りを取り戻してゆく。
―赤井くん、起きなさい―
「赤井くん、起きなさい」
その声は当時と全く変わっていなかった。
「なんてね」
芯があり優しくて、艶のある声。
先生は話を終えると皆に近況報告するよう言った。
殆どは結婚し子持ちで、会社員からフリーター、農家と様々だった。
「皆、立派になったわね」
今年で廃校になることが決まった。
「じゃあ自由時間にしましょうか」
同窓生は僅かに9人。
20数年も経って顔つきは皆だいぶ変わっていたが、名前はすんなり出てきた。
それぞれが思い出話に花を咲かせる。
「不思議ね」
「何がですか?」
「本当に昔に戻ったみたい」
本当に昔に戻ったのなら。
―藤原先生嫌やぁ―
本心でなかったあの言葉。
「ごめんなさい、先生」
優しく微笑む。
「大丈夫よ、分かってる」
気持ちのいい夏の青空、温もりのある木造の校舎、白く輝く先生の横顔。
(終)
投稿ありがとうございます。久々の二作投稿。
投稿ありがとうございます。夏の花火の儚さ。