ポール・グレアム「もの」を翻訳しました。

http://d.hatena.ne.jp/lionfan/20070814

原題は「Stuff」で、原文は以下です。
http://www.paulgraham.com/stuff.html

英語に強い方、ぜひ訳文にアドバイスいただければと思います。よろしくお願いします。

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  • 終了:2007/08/20 05:36:27
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ベストアンサー

id:nofrills No.2

回答回数874ベストアンサー獲得回数159

ポイント300pt

こんにちは。おもしろい文章をご紹介いただきありがとうございます。ざーっと見てみました。適宜お役立てください。


■第2パラグラフ:

For example, in my house in Cambridge, which was built in 1876, the bedrooms don't have closets.

※現在形です。「たとえば1876年に建てられたケンブリッジの私の家には、寝室にクローゼットがない」。


■同じく第2パラグラフ(2箇所同種の問題):

... but they'd be dwarfed by the number of toys my nephews have.

In my nephews' rooms ...

※これは日本語の処理が難しいのですが、nephewsが複数形なので、場合によっては「甥たち」と明示したほうがよいかもしれません。(「私の甥っこたちはみな」という含みがあり、たまたまたくさんおもちゃを持っている特別な甥を引き合いに出しているわけではない、ということを明示した英文です。)


■第4パラグラフ:

That was a big problem for me when I had no money.

※この主語のthatは単に「そのこと」と訳出したほうがよいのではないかと思います。具体的には前段の We overvalue stuff. (ものに対して価値を認めすぎるのだ)を受けており、つまり「ものに対して価値を認めすぎることが問題だった」の意味。第4パラグラフのこの後の部分は、この主題文に対するサポートです。


(beware of anything you find yourself describing as "perfectly good"),

※「(拾ってきたものを「ほら、どこもこわれてない、まだ完璧に使えるんだ」と自慢をしたくなるようなものに気を付けて)」と訳出されていますが、「自慢をしたくなる」のニュアンスは感じられません。このfind yourself doing ... で「ふと気づけば…している」、「無意識的に…している」なので、「(ふと気づけば「全然使えるじゃん」と言ってしまっているようなものには要注意だ)」という感じではないかと思います。


■第5パラグラフ:

In fact these free or nearly free things weren't bargains, because they were worth even less than they cost.

※「実のところ、こういったタダかほとんどタダのものは、コストのほうが価値を上回っており、無価値よりもなお悪かった」との訳ですが、「無価値よりもなお悪い」とは書かれていません。weren't bargainsで「お買い得品ではなかった」(文脈に即するなら、「タダで拾って得をしたとか、市価の10分の1で買えて得をしたといったものではなかった」)。


またbecauseの節については、「コスト」という日本語はどうしても「高価な」を連想させがちなため、「実際に支払った金額」、「財布から出て行った金額」などとして、それより価値が低かった旨、日本語で表現するのがよいのではと思います。(いい訳文を思いつかず、ここでご提案することができません。すみません。)


■第6パラグラフ:

What I didn't understand was that the value of some new acquisition wasn't the difference between its retail price and what I paid for it.

※retail priceは「販売価格」ではなく「小売価格」です。もっとわかりやすくするなら、「(ガレージセールではなく)普通に店で売っている価格」。あと、この文は素直に、「私にわかっていなかったのは~ということだった」という形で訳した方が、原文の意味合い(自省)が強く伝わるのではないかと思います。


It was the value I derived from it.

※これは強調構文ではなさそうな気がします(強調構文なら、It was the value that I derived from it. とthatが入るはず)。したがって「それから引き出せるものこそが価値だったのだ」ではなく、「それは私がそのものからderiveした価値だった」ではないかと思いますが、itの指示対象がよくわかりません。文全体からは、おそらくは前文のwhat I paid for itのことだと思いますが(すなわち、「私が支払った金額が、私がそのものから引き出した価値であった」、つまり意味的には「タダのものはまったく価値がなかった(活用しなかった)し、市価の1割の価格で手に入れたものはそれだけしか価値がなかった(使わなかった)」という意味)、ここは翻訳者複数で要検討、という箇所かもしれません。


Stuff is an extremely illiquid asset

※このilliquidは「現金化しづらい」の意味ではないでしょうか。


what difference does it make what it's "worth?"

※what difference does it makeは「だからといってどんな違いがあるのだろう」の反語(修辞疑問文)、つまり意味的には「~に意味などない」です。itはwhat節の形式主語です。したがってこの文は、「そのものの「価値」にどんな意味があろうか」という意味です。(説明の文が、「意味意味」とうるさくなってしまってすみません。)


また、このworthは、日本語だと「価値」としか思いつかないのですが、この稿ではvalueとの対比も重要かもしれません。ただし前段でMost of the stuff I accumulated was worthlessとある部分のworthを引っ張ってきている記述なので、処理が難しいですね(一種の掛詞)。worthが二重引用符でくくられていることから判断すると、意味としてはこのworthはwhat I paid for itと重なっています(説明がヘタクソで申し訳ないです)。


And if you don't have any immediate use for it, you probably never will.

※「そしてすぐに使う必要がないのなら」と訳出されていますが、「必要」は英文のどこにもありません。「そしてすぐに使わないのなら」、または「そしてすぐに役立てる用途がないのなら」。また、probably は日本語の「たぶん」よりもずっと高い確率(十中八九、程度)を示すので、「おそらく使うことはない」とか「まず使わないだろう」とした方が正確な翻訳になります。


■第8パラグラフ:

I know of one couple who couldn't retire to the town they preferred

※「好きな町に引退する」という日本語は少しぎこちないように感じられます。「一線を退いたら引っ越したいと考えていた町に引っ越せなかった夫婦」とか?(これもちょっと意訳が過ぎるかもしれませんが。)


■第9パラグラフ:

a house full of stuff can be very depressing

※このcan beは「とても憂鬱になるかもしれない」という日本語よりもっと強い印象を与えます。「時としてものすごい憂鬱の材料になる(なりうる、なるものだ)」などでしょうか。


there's less room for people in a room full of stuff.

※ここは感覚の問題なのですが、for peopleは訳出した方がよさそうな気が私はします。つまり「ものでいっぱいだと、人間のためのスペースが少なくなる」。


But there's more going on than that.

※「だがそれ以上の問題がある」というより、「問題はもっとある」。(問題の大きさを比較対照しているわけではないので。)


the less energy you have left for conscious thoughts.

※「意識的思考のためのエネルギーは奪われる」。(「能力が奪われる」とは書かれていません。)


あと、このパラグラフ全体として、clutterが「ものでふさがれた」と訳出されている点は再検討の余地があります。clutterは「乱雑さ」を前提とした語で、日本語で単に「ものでふさがれた」というと、テレビの「生活の知恵」系統の番組に出てくるような整理整頓された状態も含めてしまうので、そうではなく、「何がどこにあるのかよくわからないようなこともありうる状態」を明示したほうがよいと思います。これは次のパラグラフへのつながりの点から。


■第10パラグラフ:

why clutter doesn't seem to bother kids

※clutterの訳語を前段とそろえたほうがよいです。


They build a coarser model of their surroundings, and this consumes less energy.

※好みの問題かもしれませんが、厳密にいえば、coarserの比較級の訳出が必要です(「大人よりも粗い/粗雑な~」、「大人ほど細かくない~」など)。lessについても同様(「大人ほど~しない」)。ただ前の文とのつながりで「大人大人」とうるさくなるので、「比較的」などで置き換えても大丈夫かもしれません。


また、「子供は大人より鈍感なのだ。子供は周囲について荒っぽいモデルしか持たないので、あまりエネルギーを消費しなくて済むのだ」の「のだ」の連続の箇所、最初の「のだ」はトルでよいと思います。「子供は大人より鈍感」のサポート文が、「大人ほど細かくないしエネルギーを使う量も少ない」なので。


■第11パラグラフ:

All I took with me was one large backpack of stuff.

※この文は素直に、「私が持っていったものといえば、大きなバックパック(リュックサック)1つ分の荷物だけだった」としたほうがよいのではないかと思います。イタリアで1年暮らしたときに使ったものは、カバン1つに収まる程度の量だった、ということがコアなので。


■第12パラグラフ:

And yet when I got back ...

※「それでも旅行から戻ったとき」とありますが、前段で「1年間イタリアに住み」とあるのと整合性が取れていないように感じられます。「母国(米国に)に戻ったとき」ではいかがでしょうか。


Throw away a perfectly good rotary telephone?

※「どこもまったく壊れていないダイヤル式電話」とか?


■第13パラグラフ:

The really painful thing to recall is not just that I accumulated all this useless stuff, but that...

※これはnot only[just] ... but (also) ~の構文です。つまり、「役に立たないものをため込んだことではなく」ではなく、「役に立たないものをため込んだことだけではなく」。


stuff that I didn't.

※「それほど必要のないもの」ではなく「必要のないもの」です。


■第14パラグラフ:

Why would I do that?

※このwouldは【過去の習慣】のwouldなので、意味的には「なぜあんなことをしていたのだろう?」です。(表現はお好みで変えてください。)


Because the people whose job is to sell you stuff are really, really good at it.

※確かに意味的には「私にものを売りつけることを仕事にしている人は、商売が本当に上手いからだ」なのですが、一般的に「人」を指すyouを「私」と訳出するのは、よほどの理由がない限りは避けるべきです。「私に」はトルにするか「他人に」にするかでいかがでしょうか。


■第15パラグラフ:

I'm a fairly skeptical person,

※現在形です。


and their tricks worked on me well into my thirties.

※well into my thirtiesは「30代になってもまだ」、「30の坂を越えても」。(日本語では「30の坂」とはまず言いませんが。)


"is this going to make my life noticeably better?"

※noticeablyは「目立つほど」ではなく「見てわかるほど」程度の意味です。


■第16パラグラフ:

"Am I going to wear this all the time?"

※「いつも着る服」だとちょっと日本語がぎこちないので、文全体として、「買ったら着るかしら」とか、「たんすの肥やしにしちゃわないかしら」ではいかがでしょう。


If she couldn't convince herself that something she was thinking of buying would become one of those few things she wore all the time, she wouldn't buy it.

※one of those few thingsを「わずかな」と訳出するのはこの場合少しそぐわないかと思います。というのは、女性が「ふだん着るのはわずかな数の服だけ」というのはあまりないので。また、この文は仮定法過去ですので現在形として訳出します。「自分が買おうとしているこの服はふだん着て歩くような限られた数のアイテムのひとつになる、と確信できなければ、彼女は買いはしない」など。


Before you buy anything, ask yourself:

※「何かを買う前にこう聞いてほしい」→「何かを買う前にこう自問してほしい」。あるいはこれだとかたすぎるようなら「何かを買う前に自分にこう尋ねてみてほしい」など。


Or is it just something nice?

※niceは「良い」というより「かっこいい」というニュアンスで訳出したほうがこの文脈にはしっくり来るように思います。


■第17パラグラフ:

For example, the "good china" so many households have, and whose defining quality is not so much that it's fun to use, but that one must be especially careful not to break it.

※「たとえば多くの家庭には高級な磁器があるが、その価値のあまり楽しんで使うものではなく、壊さないように気を遣って取り扱うものになってしまっている」→「たとえば、あまりに高級すぎるから使っていても全然楽しくなく、逆に壊さないようにと神経をすり減らすだけの「高級磁器」の食器は、実に多くの家庭にある」。(すごく意訳しています。not so much thatは「~ということはあまりない」といった意味。)


■第18パラグラフ:

Another way to resist acquiring stuff

※「ものを持たないようにするもう一つの方法」→「ものを新たに手に入れようとする気持ちに打ち勝つもうひとつの方法」など。(resistが「~しないようにする」では若干弱い気がします。)


the overall cost of owning it

※「所有する全コスト」→「持ち続けていることで必要となる全コスト」。


You're going to have to think about that thing for years -- perhaps for the rest of your life.

※「長い間、たぶん人生の残り時間で、それについて考えなくてはいけない」→「何年もの間、そのもののことをずっと考えていなくちゃいけなくなる――たぶんこの先一生」。


■第19パラグラフ:

Except books?but books are different

※ここははてなダイアリーのほうでは「ダーシ」が文字化けして「?」になっていますが、原文ではExcept books -- but books are different. ですから、「本を除いては――だが本は別なのだ」という感じになります。


Books are more like a fluid than individual objects.

※likeを訳出しないと、シュールな印象を受けます。「たとえていえば、本は個別の物体というよりは液体だ」など。


if you owned several thousand random possessions you'd be a local celebrity.

※random possessionsは「本を数千冊」と対比した表現で、訳出するならば「ランダムに数千個の財産」ではなく、「種々雑多なものを数千点所有していれば、地域の有名人になってしまうだろう」という感じではないかと思います。


■最後のパラグラフ:

The good news is, if you're carrying a burden without knowing it, your life could be better than you realize.

※この文だけいきなり文体が「~ってことだ」調で浮いています。また構文解析の誤りも複数あります。without knowing itは「このことを知らなかったために」ではなく「それを(それと)知らずに」(withoutには「~ために」という因果を表す機能はないはずです)。「そう知ったことで人生がより良くなるってことだ」はrealizeの誤訳(ここではthinkと同義)と、better thanの訳し漏れがあります。


私なら、「最後に朗報を。もしそれと気づかず重荷を背負っているのなら、あなたの人生は自分で思っているよりもよいものになりうるだろう」から日本語での表現として検討を始めます。


――以上です。読んでいて身につまされる文章でした。(^^;)


タイトルですが、難しいですね、これ。コメント欄でKumappusさんがおっしゃっている通り、stuffには「ガラクタ」の意味もあるのですが、文章中すべてそれで一貫しているというわけでもなく、結局「もの」としか表しようがないような気がしてきました。あるいは「ものってやつ」という表現にするとか? ところどころ「ものってやつは、昔は希少価値があったものだった」というようにしてメリハリをつける、など。そうすると訳文全体に手を入れて文体を統一するという作業も必要になりますが……。

id:lionfan

nofrills様、長いコメントありがとうございます。

すぐ修正いたします。

2007/08/16 14:52:00

その他の回答2件)

id:kyoren No.1

回答回数59ベストアンサー獲得回数3

ポイント130pt

うまく意訳をされていて、読みやすかったです。

以下、気になった点を幾つか挙げますので、よければ参考にしてみてください。

(1) And pow, more stuff.(もっと、もっと、ものを。)

⇒ものを欲しがる心情についての文ではなく、ものが増えていくことを表す文ではないでしょうか。「こうして、ものが増えていく。」

(2) Most of the stuff I accumulated was worthless, because I didn't need it. (それらが本当に必要ではなかったので、ため込んだものの大部分は役立たずだった。)

⇒この箇所ではものの"worth"(価値)の話をしています。「役立たずだった。」というよりは「私にとって価値のないものだった。」というようなニュアンスだと思います。

(3) I often spent money I desperately needed on stuff that I didn't.(それほど必要もなかったくせに、しばしば死にものぐるいでものにお金を費やしたことだ。)

⇒"desperate"は"spend"ではなく"need"にかかっています。「どうしても必要なお金を、それほど必要のないものにしばしば費やしてしまったことだ。」

(4) whose defining quality is not so much that it's fun to use, but that one must be especially careful not to break it.(そしてその品質を知る人は、それを楽しんで使うのではなく、壊してはいけないと特に気を使うことを迫られる。)

⇒うまい訳が思い浮かばないのですが、「その品質を知る人は」という箇所に違和感を覚えます。磁器は「楽しんで使うもの」といううよりは「壊さないように気を遣って取り扱うもの」になってしまっている、というような趣旨の文だと思います。

(5) (or we got richer; they're indistinguishable)(あるいはより裕福になったと言っても同じことだ)

⇒細かい話ですが、「我々がより裕福に~」のように主語を明示した方が分かりやすいと思います。

id:lionfan

kyoren様、ありがとうございます。すぐに修正いたします。

2007/08/15 09:08:18
id:nofrills No.2

回答回数874ベストアンサー獲得回数159ここでベストアンサー

ポイント300pt

こんにちは。おもしろい文章をご紹介いただきありがとうございます。ざーっと見てみました。適宜お役立てください。


■第2パラグラフ:

For example, in my house in Cambridge, which was built in 1876, the bedrooms don't have closets.

※現在形です。「たとえば1876年に建てられたケンブリッジの私の家には、寝室にクローゼットがない」。


■同じく第2パラグラフ(2箇所同種の問題):

... but they'd be dwarfed by the number of toys my nephews have.

In my nephews' rooms ...

※これは日本語の処理が難しいのですが、nephewsが複数形なので、場合によっては「甥たち」と明示したほうがよいかもしれません。(「私の甥っこたちはみな」という含みがあり、たまたまたくさんおもちゃを持っている特別な甥を引き合いに出しているわけではない、ということを明示した英文です。)


■第4パラグラフ:

That was a big problem for me when I had no money.

※この主語のthatは単に「そのこと」と訳出したほうがよいのではないかと思います。具体的には前段の We overvalue stuff. (ものに対して価値を認めすぎるのだ)を受けており、つまり「ものに対して価値を認めすぎることが問題だった」の意味。第4パラグラフのこの後の部分は、この主題文に対するサポートです。


(beware of anything you find yourself describing as "perfectly good"),

※「(拾ってきたものを「ほら、どこもこわれてない、まだ完璧に使えるんだ」と自慢をしたくなるようなものに気を付けて)」と訳出されていますが、「自慢をしたくなる」のニュアンスは感じられません。このfind yourself doing ... で「ふと気づけば…している」、「無意識的に…している」なので、「(ふと気づけば「全然使えるじゃん」と言ってしまっているようなものには要注意だ)」という感じではないかと思います。


■第5パラグラフ:

In fact these free or nearly free things weren't bargains, because they were worth even less than they cost.

※「実のところ、こういったタダかほとんどタダのものは、コストのほうが価値を上回っており、無価値よりもなお悪かった」との訳ですが、「無価値よりもなお悪い」とは書かれていません。weren't bargainsで「お買い得品ではなかった」(文脈に即するなら、「タダで拾って得をしたとか、市価の10分の1で買えて得をしたといったものではなかった」)。


またbecauseの節については、「コスト」という日本語はどうしても「高価な」を連想させがちなため、「実際に支払った金額」、「財布から出て行った金額」などとして、それより価値が低かった旨、日本語で表現するのがよいのではと思います。(いい訳文を思いつかず、ここでご提案することができません。すみません。)


■第6パラグラフ:

What I didn't understand was that the value of some new acquisition wasn't the difference between its retail price and what I paid for it.

※retail priceは「販売価格」ではなく「小売価格」です。もっとわかりやすくするなら、「(ガレージセールではなく)普通に店で売っている価格」。あと、この文は素直に、「私にわかっていなかったのは~ということだった」という形で訳した方が、原文の意味合い(自省)が強く伝わるのではないかと思います。


It was the value I derived from it.

※これは強調構文ではなさそうな気がします(強調構文なら、It was the value that I derived from it. とthatが入るはず)。したがって「それから引き出せるものこそが価値だったのだ」ではなく、「それは私がそのものからderiveした価値だった」ではないかと思いますが、itの指示対象がよくわかりません。文全体からは、おそらくは前文のwhat I paid for itのことだと思いますが(すなわち、「私が支払った金額が、私がそのものから引き出した価値であった」、つまり意味的には「タダのものはまったく価値がなかった(活用しなかった)し、市価の1割の価格で手に入れたものはそれだけしか価値がなかった(使わなかった)」という意味)、ここは翻訳者複数で要検討、という箇所かもしれません。


Stuff is an extremely illiquid asset

※このilliquidは「現金化しづらい」の意味ではないでしょうか。


what difference does it make what it's "worth?"

※what difference does it makeは「だからといってどんな違いがあるのだろう」の反語(修辞疑問文)、つまり意味的には「~に意味などない」です。itはwhat節の形式主語です。したがってこの文は、「そのものの「価値」にどんな意味があろうか」という意味です。(説明の文が、「意味意味」とうるさくなってしまってすみません。)


また、このworthは、日本語だと「価値」としか思いつかないのですが、この稿ではvalueとの対比も重要かもしれません。ただし前段でMost of the stuff I accumulated was worthlessとある部分のworthを引っ張ってきている記述なので、処理が難しいですね(一種の掛詞)。worthが二重引用符でくくられていることから判断すると、意味としてはこのworthはwhat I paid for itと重なっています(説明がヘタクソで申し訳ないです)。


And if you don't have any immediate use for it, you probably never will.

※「そしてすぐに使う必要がないのなら」と訳出されていますが、「必要」は英文のどこにもありません。「そしてすぐに使わないのなら」、または「そしてすぐに役立てる用途がないのなら」。また、probably は日本語の「たぶん」よりもずっと高い確率(十中八九、程度)を示すので、「おそらく使うことはない」とか「まず使わないだろう」とした方が正確な翻訳になります。


■第8パラグラフ:

I know of one couple who couldn't retire to the town they preferred

※「好きな町に引退する」という日本語は少しぎこちないように感じられます。「一線を退いたら引っ越したいと考えていた町に引っ越せなかった夫婦」とか?(これもちょっと意訳が過ぎるかもしれませんが。)


■第9パラグラフ:

a house full of stuff can be very depressing

※このcan beは「とても憂鬱になるかもしれない」という日本語よりもっと強い印象を与えます。「時としてものすごい憂鬱の材料になる(なりうる、なるものだ)」などでしょうか。


there's less room for people in a room full of stuff.

※ここは感覚の問題なのですが、for peopleは訳出した方がよさそうな気が私はします。つまり「ものでいっぱいだと、人間のためのスペースが少なくなる」。


But there's more going on than that.

※「だがそれ以上の問題がある」というより、「問題はもっとある」。(問題の大きさを比較対照しているわけではないので。)


the less energy you have left for conscious thoughts.

※「意識的思考のためのエネルギーは奪われる」。(「能力が奪われる」とは書かれていません。)


あと、このパラグラフ全体として、clutterが「ものでふさがれた」と訳出されている点は再検討の余地があります。clutterは「乱雑さ」を前提とした語で、日本語で単に「ものでふさがれた」というと、テレビの「生活の知恵」系統の番組に出てくるような整理整頓された状態も含めてしまうので、そうではなく、「何がどこにあるのかよくわからないようなこともありうる状態」を明示したほうがよいと思います。これは次のパラグラフへのつながりの点から。


■第10パラグラフ:

why clutter doesn't seem to bother kids

※clutterの訳語を前段とそろえたほうがよいです。


They build a coarser model of their surroundings, and this consumes less energy.

※好みの問題かもしれませんが、厳密にいえば、coarserの比較級の訳出が必要です(「大人よりも粗い/粗雑な~」、「大人ほど細かくない~」など)。lessについても同様(「大人ほど~しない」)。ただ前の文とのつながりで「大人大人」とうるさくなるので、「比較的」などで置き換えても大丈夫かもしれません。


また、「子供は大人より鈍感なのだ。子供は周囲について荒っぽいモデルしか持たないので、あまりエネルギーを消費しなくて済むのだ」の「のだ」の連続の箇所、最初の「のだ」はトルでよいと思います。「子供は大人より鈍感」のサポート文が、「大人ほど細かくないしエネルギーを使う量も少ない」なので。


■第11パラグラフ:

All I took with me was one large backpack of stuff.

※この文は素直に、「私が持っていったものといえば、大きなバックパック(リュックサック)1つ分の荷物だけだった」としたほうがよいのではないかと思います。イタリアで1年暮らしたときに使ったものは、カバン1つに収まる程度の量だった、ということがコアなので。


■第12パラグラフ:

And yet when I got back ...

※「それでも旅行から戻ったとき」とありますが、前段で「1年間イタリアに住み」とあるのと整合性が取れていないように感じられます。「母国(米国に)に戻ったとき」ではいかがでしょうか。


Throw away a perfectly good rotary telephone?

※「どこもまったく壊れていないダイヤル式電話」とか?


■第13パラグラフ:

The really painful thing to recall is not just that I accumulated all this useless stuff, but that...

※これはnot only[just] ... but (also) ~の構文です。つまり、「役に立たないものをため込んだことではなく」ではなく、「役に立たないものをため込んだことだけではなく」。


stuff that I didn't.

※「それほど必要のないもの」ではなく「必要のないもの」です。


■第14パラグラフ:

Why would I do that?

※このwouldは【過去の習慣】のwouldなので、意味的には「なぜあんなことをしていたのだろう?」です。(表現はお好みで変えてください。)


Because the people whose job is to sell you stuff are really, really good at it.

※確かに意味的には「私にものを売りつけることを仕事にしている人は、商売が本当に上手いからだ」なのですが、一般的に「人」を指すyouを「私」と訳出するのは、よほどの理由がない限りは避けるべきです。「私に」はトルにするか「他人に」にするかでいかがでしょうか。


■第15パラグラフ:

I'm a fairly skeptical person,

※現在形です。


and their tricks worked on me well into my thirties.

※well into my thirtiesは「30代になってもまだ」、「30の坂を越えても」。(日本語では「30の坂」とはまず言いませんが。)


"is this going to make my life noticeably better?"

※noticeablyは「目立つほど」ではなく「見てわかるほど」程度の意味です。


■第16パラグラフ:

"Am I going to wear this all the time?"

※「いつも着る服」だとちょっと日本語がぎこちないので、文全体として、「買ったら着るかしら」とか、「たんすの肥やしにしちゃわないかしら」ではいかがでしょう。


If she couldn't convince herself that something she was thinking of buying would become one of those few things she wore all the time, she wouldn't buy it.

※one of those few thingsを「わずかな」と訳出するのはこの場合少しそぐわないかと思います。というのは、女性が「ふだん着るのはわずかな数の服だけ」というのはあまりないので。また、この文は仮定法過去ですので現在形として訳出します。「自分が買おうとしているこの服はふだん着て歩くような限られた数のアイテムのひとつになる、と確信できなければ、彼女は買いはしない」など。


Before you buy anything, ask yourself:

※「何かを買う前にこう聞いてほしい」→「何かを買う前にこう自問してほしい」。あるいはこれだとかたすぎるようなら「何かを買う前に自分にこう尋ねてみてほしい」など。


Or is it just something nice?

※niceは「良い」というより「かっこいい」というニュアンスで訳出したほうがこの文脈にはしっくり来るように思います。


■第17パラグラフ:

For example, the "good china" so many households have, and whose defining quality is not so much that it's fun to use, but that one must be especially careful not to break it.

※「たとえば多くの家庭には高級な磁器があるが、その価値のあまり楽しんで使うものではなく、壊さないように気を遣って取り扱うものになってしまっている」→「たとえば、あまりに高級すぎるから使っていても全然楽しくなく、逆に壊さないようにと神経をすり減らすだけの「高級磁器」の食器は、実に多くの家庭にある」。(すごく意訳しています。not so much thatは「~ということはあまりない」といった意味。)


■第18パラグラフ:

Another way to resist acquiring stuff

※「ものを持たないようにするもう一つの方法」→「ものを新たに手に入れようとする気持ちに打ち勝つもうひとつの方法」など。(resistが「~しないようにする」では若干弱い気がします。)


the overall cost of owning it

※「所有する全コスト」→「持ち続けていることで必要となる全コスト」。


You're going to have to think about that thing for years -- perhaps for the rest of your life.

※「長い間、たぶん人生の残り時間で、それについて考えなくてはいけない」→「何年もの間、そのもののことをずっと考えていなくちゃいけなくなる――たぶんこの先一生」。


■第19パラグラフ:

Except books?but books are different

※ここははてなダイアリーのほうでは「ダーシ」が文字化けして「?」になっていますが、原文ではExcept books -- but books are different. ですから、「本を除いては――だが本は別なのだ」という感じになります。


Books are more like a fluid than individual objects.

※likeを訳出しないと、シュールな印象を受けます。「たとえていえば、本は個別の物体というよりは液体だ」など。


if you owned several thousand random possessions you'd be a local celebrity.

※random possessionsは「本を数千冊」と対比した表現で、訳出するならば「ランダムに数千個の財産」ではなく、「種々雑多なものを数千点所有していれば、地域の有名人になってしまうだろう」という感じではないかと思います。


■最後のパラグラフ:

The good news is, if you're carrying a burden without knowing it, your life could be better than you realize.

※この文だけいきなり文体が「~ってことだ」調で浮いています。また構文解析の誤りも複数あります。without knowing itは「このことを知らなかったために」ではなく「それを(それと)知らずに」(withoutには「~ために」という因果を表す機能はないはずです)。「そう知ったことで人生がより良くなるってことだ」はrealizeの誤訳(ここではthinkと同義)と、better thanの訳し漏れがあります。


私なら、「最後に朗報を。もしそれと気づかず重荷を背負っているのなら、あなたの人生は自分で思っているよりもよいものになりうるだろう」から日本語での表現として検討を始めます。


――以上です。読んでいて身につまされる文章でした。(^^;)


タイトルですが、難しいですね、これ。コメント欄でKumappusさんがおっしゃっている通り、stuffには「ガラクタ」の意味もあるのですが、文章中すべてそれで一貫しているというわけでもなく、結局「もの」としか表しようがないような気がしてきました。あるいは「ものってやつ」という表現にするとか? ところどころ「ものってやつは、昔は希少価値があったものだった」というようにしてメリハリをつける、など。そうすると訳文全体に手を入れて文体を統一するという作業も必要になりますが……。

id:lionfan

nofrills様、長いコメントありがとうございます。

すぐ修正いたします。

2007/08/16 14:52:00
id:moonan No.3

回答回数93ベストアンサー獲得回数6

ポイント100pt

おひさしぶりです!最近忙しくてはてなもたまに見るだけですが、今回ちょっとだけ参加させてくださいませ。


I think humans constantly scan their environment to build a mental model of what's around them.

私の思うに、人は周囲のメンタルモデルを作るために、絶えず自分の環境をスキャンしている。

<試訳>私の思うに、人は常に自分の周囲に気を巡らし、周囲に何があるのかを認識している。

※もとの訳でもいいんですがなんとなく文系味にしてみました。でもいきなりメンタルモデルという専門用語から始まるとちょっと面食らうかもしれないので、「常に自分の周りををスキャンして周りのメンタルモデルを作っている」という英文のままの順序にしたほうが分かりやすいかも知れませんね。


For example, the "good china" so many households have,

and whose defining quality is not so much that it's fun to use, but that one must be especially careful not to break it.

たとえば、あまりに高級すぎるから使っていても全然楽しくなく、逆に壊さないようにと神経をすり減らすだけの「高級磁器」の食器は、実に多くの家庭にある。

※「全然楽しくない」というより、「楽しさより神経すり減らすほうが比率が多く、そっちが価値の本質だ」みたいな意味だと思います。2文にしてdefinig qualityをごまかし訳してみました。

<試訳>たとえば、多くの家庭にある「高級磁器」がそうだ。使って楽しむものというより、壊さないようにと神経をすりへらしてしまうもの、というほうがその本質を表している。


I'm not claiming this is because I've achieved some kind of zenlike detachment from material things. I'm talking about something more mundane. A historical change has taken place, and I've now realized it. Stuff used to be valuable, and now it's not.

私は禅的な悟りをひらいてこの境地に至ったと言うつもりはない。もっと俗な話だ。歴史的な変化が起きて、私はようやくそれを理解した。かつてものは貴重だった、そして今はそうではないのだ。

※「悟りなんかすごいものではなく、単に俗的なもの」、と言った後で、「歴史的な変化を私はようやく理解した」とくると、「やっぱりすごいって言ってるじゃん」って思ってしまうかも。訳し方別に間違ってないんですけども。「歴史的」っていうとすごそうな感じですけど、hisitryって「履歴」「過去の経験」のように「時間的」ぐらいの意味しかないことがあるので、「時代の変化」とか「世の中の変化」のようにあっさり風味で訳して意味の強度のバランスをとってみました。

私は何も禅的な悟りの境地からこんなことを言っているわけではない。もっと世俗的な話だ。時代に変化が起き、それに気づいた、というだけのことだ。かつてものは貴重だった、そして今はそうではないのだ。

id:lionfan

moonan様、お久しぶりです。ご指摘ありがとうございます。最初のもの以外は修正しました。

最初のメンタルモデルとスキャンの話は、とても気に入っている部分ですので、そのままにさせてください。ポール・グレアムはときどきえっと思うような専門用語を、1エッセイに1つ2つ入れるクセがあって、個人的にはすごく気に入っているのです。

2007/08/18 22:28:36
  • id:Kumappus
    拒否られているので(20人じゃ無理ですよ)、ちょっとだけこちらに。
    タイトルの「もの」ですが、訳しにくいですねえ。
    stuffには
    http://www2.alc.co.jp/ejr/index.php?word_in=stuff&word_in2=%82%A0%82%A2%82%A4%82%A6%82%A8&word_in3=PVawEWi72JXCKoa0Je
    「がらくた」の意味もあるんで、どっちにも取れるような書き方になってるんですよね>この文章

    例えば、
    Stuff used to be rare and valuable.
    がらくたといっても元は希少で貴重だった。
    では「がらくた」と言ったほうがすっきりくるし、でも

    Stuff has gotten a lot cheaper, but our attitudes toward it haven't changed correspondingly.
    物はすごく安くなった。でも我々がそれにつられて態度を変えたわけではない。
    だと「物」と言わないとダメだし。
  • id:lionfan
    Kumappusさま、拒否設定を外すのを忘れておりました。すみません。いま外しました。
    Stuffの「もの」という訳は、こちらもすこし悩みました。
    よほど「ものに捕らわれるな」とかしようかと思いました。
  • id:NAPORIN
    私なぞは20人を超えた人に拒否られているようです。まだ灰色ですから。

    ・・・・ちょっと取り込んでいるので拒否はずしはしなくて結構ですが、へこみますね・・・
  • id:lionfan
    ああ、NAPORIN様、いま別の質問を立てているので、また拒否設定を復活させているのです。50人とか100人とか実装してほしいですね。
  • id:moonan
    >ポール・グレアムはときどきえっと思うような専門用語を、1エッセイに1つ2つ入れるクセがあって、個人的にはすごく気に入っているのです。

    LISPの人だから認知心理学とかにも詳しいんでしょうね。読みやすい平易な文章にチラッと知性が出てるとこがカッコいいですよね。

    書き忘れたんですが、第四段落の

    That was a big problem for me when I had no money.
    お金がなかったころ、私にとってそのことは重要だった。

    の文章の「そのこと」は、「それ」か、「もの」のほうが良いと思います。「そのこと」だと前文の「ものを過大評価していること」を指しているようになり、「過大評価が重要」では意味不明になるのでは。このThisは「もの」か、「ものを持つこと」を意味してるのではないかと思います。
  • id:lionfan
    moonan様、了解です。「もの」に戻します。
  • id:nofrills
    lionfanさん、いるかをありがとうございました。

    上の件ですが、この文のThat was a big problemは、主語をどう訳出しようとも、「大きな問題だった」であって、「重要だった」ではないのではと思います(もちろん「重要だった」と“意訳”してどんぴしゃりの事例も多くありますが、ここは違う)。

    お金がないときに「ああ、これはすごいものだな、ほしいな」と過大評価していたからこそ、「市価の10分の1」で見つけたら買う、道端に捨ててあれば拾ってくる、ということをしていて、結局使いもせずに溜め込む一方だった、ということを著者は綴っているわけですから。

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