http://bk1.hatena.ne.jp/1108232510
で、「SF冬の時代」と表現しましたら、ある方から、「それは事実誤認だ。今は、一般小説の中にも、SF的な設定やガジェットが取り込まれていて、いわゆるジャンルとしてのSFと一般小説との境界があいまいになっているだけだ」という意見をいただきました。
といわれても、早川文庫と創元推理文庫とハルキ文庫しか読んだことのない質問者には、どの一般小説がそうしたものにあたるのか見当もつきません。
そこで、そういう小説、つまりSFとは分類されていないが、内容は「近未来SF」に分類されるような一般小説を御存知の方は教えてください。
Sの部分のまったくないファンタジー・ノベルは今回は対象外とさせてください。
それでは、よろしく御願いします。
いわゆるライトノベルと呼ばれるジャンルには名実ともにSFな作品が沢山あります。特に電撃文庫の秋山瑞人氏や古橋秀之氏はSF畑からも注目されています。
本当の一般小説という点では、例えば宮部みゆき氏(この人はまあコテコテの一般エンタメ小説と言って良いでしょう)の蒲生邸事件なんか、近未来物ではないですがタイムスリップ物として良くできていると思います。たしかSFの賞も取っていたはず。
個人的には恩田陸氏にもSFマインドを感じますが、あまりサイエンスではないかもしれません。
>ライトノベルと呼ばれるジャンルには名実ともにSFな作品が沢山あります。
なるほど、このジャンルがありましたか。
まだ未読のものが多いので、これは楽しみです。
宮部みゆきさんも、時代物に浮気しないで、こっちで書いてほしいんですけど〜。
ありがとうございました。
その節は有難うございました。堪能させて頂きました。
さて、「SF冬の時代」が指す時代範囲はサイバーパンクの沈静化以後だと推測していますか、一方で反論にある「今は」が、昭和50年代頃からを指すように思えてならないのです、なんとなく。
三島由紀夫の「美しい星」が、必ずしもSFを専門とはしない作家によって書かれたSF小説(個人的には傑作と)と認識しています。ある日自らが宇宙人であると気付いた一家の長を主人公とし、物語は、家族それぞれが自らが宇宙人であったことの知覚を経て、UFO飛来を希求することを軸に進行します。ある意味で、というか、社会的な何かを描くというあたりで、ウェルズっぽさがあります。
また、北杜夫の「人工の星」が、内容をかなり忘れてしまったんですが、かなり古いものの(初期です)、SF的な切り方で、人工的な世界での寂寥感を描いたものです。これは、たんに「もしかしたら北杜夫はSF作家をしたかもしれない」という位置付けかもしれません。
ガジェットもちだしレベルだと大江の「三百年の子供」(未読です、すみません。タイム物)、や、「治療塔惑星」(中途半端な読後感でした。レムもどきのような)
家畜人ヤプーは、ガジェット多いですよね。タイムマシンとかウィルスの地球規模での流行(ω熱)とか未来の地球とか肉便器とか。位置付け微妙ですが。
大江健三郎は、ちょっとSFには向いてないような・・・いや、質問者が読解できないだけかもしれませんが(^^;)。
むしろ、三島由紀夫、安部公房、北杜夫の流れのほうが読みやすいです。
shampoohatさん、結局「時間テーマ」は、パラレルワールドで挙げたものとの重なりを回避するのが難しいので、あきらめてしまいました。
>「SF冬の時代」が指す時代範囲はサイバーパンクの沈静化以後だと推測しています
サイバーパンク・ムーブメント以後、SFと一般小説の境界があいまいになり、いわゆる古き良き時代を感じさせるSFはパロディの形でしか書かれなくなったという気が、私もします。
ありがとうございました。
女王の百年密室―GOD SAVE THE QUEEN (新潮文庫)
◆「女王の百年密室」森博嗣
分類するとミステリー(厳密にいえば、森博嗣の作品は“ミステリィ”と表記します(笑))になると思うのですが、舞台は2113年。ミチルとウォーカロンのロイディのコンビが、事件に巻き込まれるという話です。単体で楽しむ分には、近未来のちょっと変わったミステリーという面持ちですが、森作品を最初からシリーズ順に読破しているファンにとっては、また大きな意味をもつ作品となっています。
基本的にSFには苦手意識を持っているのですが、私の得意分野であるミステリーという切り口であの世界を描いた作品だと、ほとんど抵抗なく読めるから不思議です。
◆「七回死んだ男」西澤保彦
舞台は近未来ではないのですが、タイムスリップの中でも“リプレイもの”といわれるものに該当するミステリーです。ある日突然、同じ日が9回繰り返されるという「反復落とし穴」(主人公命名)にハマる主人公が、祖父の殺害を阻止しようとする内容。SFの要素を入れつつ、しかも謎解きはとても論理的であるところがこの作者の特徴の一つです。謎解きが主体となってきますので、SFの設定もきっちりしていて、いわゆるミステリーの伏線に当たる部分はとても細かくルールが決められています。私が読んだ作品では、ほかに「ナイフが町に降ってくる」「異邦人」もSFを取り入れた本格ミステリーです。
◆「タイタンの殺人」有栖川有栖(「ジュリエットの悲鳴」収録)
有栖川有栖といえば、新本格の代表選手でもありますが、やはりこの人もSFミステリーに挑戦してます。地球外で起こった殺人事件を、論理的に解決しているのですが、なかなか笑えます。
こんな感じで、ミステリーには案外思っているより多くの作品にSF的要素が取り入れられています。今は現代を舞台にしたモノが多いですが、時代モノのミステリーもあることですから、そのうち近未来を舞台とした作品もいろいろと出てくるんじゃないかと思っています。
>こんな感じで、ミステリーには案外思っているより多くの作品にSF的要素が取り入れられています。
そうですよね。量子暗号なんていうものがマジメに議論される時代なので、現代を舞台にしても「SF」にかなり接近しているミステリは多そうです。この分野もすこし開拓したいと思います。
ありがとうございました。
ご質問の趣旨からは多少外れますが、上に挙げたurlで<q>SFって二種類あって、「SFとして書かれたSF」と「SF者に発見されたSF」ってのがある</q>という言葉を発見しましたので、SF小説と一般小説の境界が曖昧になっている例としてあげさせて頂きます。
ここで紹介されているのは一般小説をSFに携わる人たちが「SFマインドを感じてSFと認めた」ものですね。
井上ひさし氏の「吉里吉里人」のSF大賞受賞がその象徴といえるでしょうか。
宮部みゆきさんなら「火車」よりもすでに挙げられた「蒲生邸事件」や「龍は眠る」によりSFテイストが強いかと思います。
近年、「アルジャーノンに花束を」が一般小説のようにテレビドラマ化されてしまったことも(内容の改変についての賛否はこの際置いておくとして)SFと、一般小説の境界線が曖昧になりつつあることの証左だろうと思います。
宮部みゆきさんは立派なSFもかけそうな感じですよね。
参考URLの中の川端裕人氏の発言「本当に面白いSFは今もあるんですよ。でも不思議なことにそれがほとんどジュニア小説なんです。」というのも、綿矢りささんの「インストール」が漫画化されている現象などを見ると、納得がいきます。
http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/4217c00ed9...
ありがとうございました。
今回で終わりです。
うーん、紹介文を読むと、まさに近未来もの、という感じですね。
そこに京極 夏彦さんのエンターテインメント性が加わると、けっこう楽しめそうな。
ありがとうございました。